第3話「ポジティブは現実逃避の裏返し」
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
二人は最上階近くまで来た。あともう2、3階登れば屋上に着くだろう。
だが双葉が怖がったのは、今のところない。幽霊を目撃する以前に、普通なら夜中の廃病院を歩くだけで、多少の恐怖を抱くはずなのに。全く、どんな神経してるんだ。
「!?」
ポン、と肩に何かが触れる。
銀時は驚きのあまりその場で立ち止まる。だが双葉は気付かないのか、先に行ってしまう。恐怖に声が出ず、恐る恐る振り向いた。
すると身体の中身を半分むき出しにした人体模型が銀時の眼前にいた。
「うぎゃああああああああああああ!」
「ん?」
いきなりの絶叫に振り向く。銀時がこちらに猛突進してくる。
突然の出来事に、さすがの双葉も避け切れない。
「おわ!」
そのまま二人は激突し、銀時は双葉を巻き込み大きく体勢を崩してしまった。
結果、押し倒す形になったのだが、その勢いは止まらない。
双葉の目の前に銀時の顔が迫る。互いの唇が重なろうとした、その瞬間――双葉の脳裏にあの記憶が湧き上がる。
万事屋に突然現れた高杉と共に過ごしたヒトトキ。
抑圧している『獣』を誘うため迫ってきた高杉。
ありのままに一つになろうとした男。
そして、今目の前に迫る兄が、その姿と重なる。
『楽しもうぜ。……俺と一緒に』
「!」
“バコッ”
「グァ!」
思いっきり腹部を蹴られ、そのまま押し飛ばされた。
銀時は腹部を抱え文句を言いながら起き上がるが――
「ってェな!何す……」
銀時は不意に口を閉じた。
双葉は荒い息を立て小刻みに震えていた。何度も何度も。
「……………」
――おかしい。
高杉が万事屋に現れたあの夜から、昔の事をよく思い出すようになった。
――いや、違う。
突然過去の光景が浮かび上がる。
強制的に『それ』を見てしまう。まるで頭に無理矢理突き刺された様な感覚だ。
だが思い出すのは、戦場を駆け抜けていた記憶。
そう、殺す事を誰よりも楽しんでいた記憶が蘇る。
――振り払いたい。
でも、『それ』は根っこが頭に巻きついてもうとれない。無理に抜いたら、大切なモノまで消えてしまう。
そんな気がして、消す事もできない。
――この感覚は一体なんだ?どうしてこんな感覚に見舞われる?
――高杉の言葉を聞いただけで、こんな風になるのはおかしい。
――それだけじゃない。そうそれだけじゃ……。
「おい!」
銀時の声で自問自答は止まった。
我に返った双葉が立ち上がると、銀時もつられて立ち上がる。
そして何事もなかったかのように、双葉は先に進もうとした。だが、当然銀時に肩を掴まれ阻まれた。
「お前、何された。……アイツに何された」
いつになく真剣な声。
それは彼が普段と違って
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ