第三十二話 風紀委員と風鈴と
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たのだろう。初春さんもそろそろジャッジメントの仕事があるし、佐天さんには悪いが二人とも先に帰らせてもらうことにした。
「それじゃー初春さん、今日もがんばってね」
「はい、当然です」
下駄箱の前で俺が仕事に向かう初春さんにエールを送ると、初春さんはかなり気合を入れて答えてくれたのだが、ちょっと心配になったので一言付け加えておく。
「でも無理はしないようにね」
「分かってますって」
こうして初春さんとは校門前で別れて寮に戻ったのである。
寮に戻ってしばらくはゆったりとくつろいでいたのだが、暑さもあって何だか無性にカキ氷が食べたくなったので出かけることにした。扇風機こそ回していたものの、エアコンを使ってなかったのが大きいのかもしれない。
カキ氷を食べに行くといっても、俺は“カキ氷屋さん”というのがどこにあるのかを知らない。まぁ、ファミレス辺りならこの時期間違いなくメニューにカキ氷があるはずだが、気分的には出店とか屋台のカキ氷屋で買って付近のベンチで食べたいのだ。
繁華街付近の大きな公園か、いそべ銀行前の広場辺りならカキ氷屋さんも出ているだろうと思ってその方向へ歩いていると、途中でよく知っている気配を感じたので行ってみる。
「御坂さん、こんな所で何やってるの?」
「あっ! いや……その、まー、色々とね」
なぜかコンビニ前で掃除をしている御坂さんに声をかけると、あからさまに動揺した様子で答えてくれた。
「御坂さん、遊んでないでちゃんと仕事する。……って、神代君じゃない」
「あ、こんにちはー。お仕事中ならお疲れ様です、固法さん」
コンビニから出てきた固法さんに御坂さんが注意されているが、ここに来てようやくアニメの展開だということに気付いた。確か女の子の鞄を探して御坂さんが池だったか噴水だったかに飛び込むやつである。
「神代君と御坂さんって、知り合いなの?」
「はい」
「ええ、まぁ」
固法さんに聞かれて俺と御坂さんが答えるが、御坂さんの答えは歯切れが悪いものだった。というか御坂さんは今、俺に初春さんの忘れ物である腕章が見えないように、そして固法さんにも動きが不自然に見えないように頑張りつつ、俺に向かって「余計なことは言わないでよ」オーラを発するという、客観的に見ればかなり器用なことをやってのけているのである。ここで流暢に切り抜けられていたなら、御坂さん的には完璧だったに違いない。
「それで、神代君は何してたの?」
固法さんが俺に話を向けてきたので、御坂さんはほっとしつつも俺に向けている「余計なことは言わないでよ」オーラを更に強める。滅茶苦茶に器用である。
「暑いのでカキ氷でも食べに行こうかと思って歩いてたら、
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