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【銀桜】2.廃病院篇
第2話「BGMは空気読んで選曲しろ」
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踏みつけている双葉が映った。銀時に飛びかかった瞬間に蹴り落とし、そのまま身動きをとれないようにしたらしい。
 その足でグイグイと押さえつけ、双葉は洋風人形を見下ろした。
「おい、ガキ。そんな見かけ倒しのナイフで何がしたいんだ。あと『待ってた』と言ってたが、いつからだ?少し前からか?まさか、私たちがここに来るまでずっとそこで座っていたのか。くだらない。
 お主、待っているだけでは何も始まらないぞ。待つだけの人生は何も生まない、空っぽで退屈だ。何より待っている間の時間が無駄だ。無駄にするくらいなら、私は誰かを堕としに行くな。これ以上お主が時間を無駄にするなら、私が有効に活用しよう。さぁ、どんなふうに堕とそうか」
 マシンガンの如く降り注ぐツッコミは、洋風人形に弁解する隙すら与えなかった。
 軽やかな口調とは裏腹の双葉の黒い笑み。そのギャップのせいで、洋風人形より怖く感じる。
 『堕とし方』をあれこれ語り始めた頃、ようやく銀時のツッコミが入った。
「コラァァァァァ。チャッキーになに長ったらしい説教してんだ。つか最後のってお前の願望だろーが。子供相手に大人気ねェよ」
「大人がガキの指導をするのは当然のことだろ。兄者は怠り過ぎだ」
「何言ってやがる。いざって時は無垢な子供を汚らわしい大人の階段へ導いてるだろ。理想と現実は違ェってことを教えんのが大人の役目だ」
「その前にコレは人形だがな」
 『人形』。
 そう、チャッキーはホラー人形なのだ。子供相手に説教とか言ってる場合ではない。
「つーか、これチャッキーだよ。あのチャッキーだよ。チャッキー知ってる?」
「知っている。自分の顔があまりに醜いから、美人を妬み襲っている惨めな人形だろ」
「全然違ェェェェェェェェェ!!それ見た目だけで連想したお前の勝手なイメージ!チャッキーはな、殺人鬼の魂が乗り移った人形だって。さっきみてェにズガズガ襲ってくだんよ。怖ェだろ」
「というよりここまで酷くひん曲がった顔を見ると哀れさを感じる」
 ホラーに容姿求めてどうする、と言い返そうとした時……すすり泣く声が廊下に響き渡る。
 銀時は目を丸くして、泣いてる本人を確かめた。そう、泣いていたのはさっきまで置いてきぼりにされていたチャッキーだった。
【グスン、グスン。……俺だって、俺だって好きでこんな顔になったんじゃないやい】
「あれ?チャッキー泣いてる?」
 不気味な笑みは依然として変わらない。
 だが頬にはいくつもの水滴が流れ落ち、顔はくしゃくしゃに濡れていた。加えて駄々っ子のように泣いてる。もはやホラー要素は一切なし。
【別にキ○タクみたいなツラに憧れてなんかねーよッ】
 そう涙にまみれながらチャッキーは走り去り、悲痛な泣き声も暗闇に消えていった。再び廊下には銀時と双葉の二人だけになった。

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