第1話「友達を脅かそうとする奴こそ一番ビビってる」
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が間一髪で駆けつけて、高杉はすんなり立ち去った。だが、あのまま終わると思えない。
一人になれば、また現れるかもしれない。そうなったら今度こそ――
ただ双葉がそこまで気にしているかわからないし、心配し過ぎかもしれない。けれどまた一人にさせるのは、やはり気が引ける。
そう銀時が考えていると、双葉はピザもどきを食べ終えて、ボソリと呟いた。
「真夏の特大ダブローピザ」
「……わーったよ」
兄の溜め息混じりの返事を聞いて、双葉も立ち上がった。
* * *
かつては江戸一の大病院。
だが十年前の大火事で廃墟となり、院長だった老夫婦も引っ越してしまった。それからは買い手がつかず放置状態。しばし若者がフザけて入っていたりしたが、『子供の笑い声が聞こえる』『血まみれの少女が襲ってくる』などの怪現象が起きてから誰も立ち寄らなくなった。
しかし、今宵は廃病院の前に三人と一匹の影。
「新八来なかったな」
「臆病者がいても足手まといになるだけだ。全く、どうしようもない駄メガネだ」
本人がいない所でも構わず罵倒を口にする双葉。
そんな妹を隣に、銀時はかつて病院だった廃墟を見上げた。月明かりがあるはずなのに、ココだけやけに暗くて黒いモヤに包まれている……ように見えるのは気のせいか。
「しっかしマジで出そうだな。まぁ俺全然怖くねェけど」
「アァ!」
「おわっ!!……いきなり大声出すな。神楽どったの?」
「銀ちゃん、今あそこの窓からお婆さんが私たち見てたヨ」
「なっ!?」
すぐさま神楽が指さす窓を見るが、老婆などいない。
「……誰もいねーじゃんか。な、何、お前そんなんで脅かそうとしてんのォ。馬鹿じゃん。んな子供騙しで俺をビビらせようなんざ、ひゃ百年早ェんだよ」
どーみてもビビってんの丸見えだが、神楽は何も言わず黙りこんでいる。その顔色は青ざめてるようにも見えた。
「……私、用事思い出したアル。ドラマ見なきゃ。今日最終回ネ。ピン子どーなるか気になるアル。ほら、定春はやく帰るヨ」
ワン、と吠えて定春は神楽を乗せたまま来た道を戻っていった。曲がり角を曲がった後も、一人と一匹が戻ってくる様子は全くない。
「んだよ、どいつもコイツも。さっさと調べて帰るぞ。……たく、入る前にけェるなんて興ざめもいいとこだろ」
銀時はブツブツと文句をこぼしながら、薄暗い廃病院の入り口へ足を運ぶ。
「全く度胸のない天人だ。老婆が立ってただけで帰るとはな」
さらりと言った妹の一言に、今度は銀時が青ざめた。
身震いしながら恐ろしい発言をした妹にゆっくり振り返る。
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「……お前も見たのかァ?」
「あの天人が気づいて私が気づかないわけないだろ」
双葉は普段と変わらない冷めた眼で、淡々と真実
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