第一章 月隠のメリーズ・ドール
第一話。8番目のセカイ
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れたような温かく、どこか懐かしさを感じる家庭の味だった。
家事を万全にこなせる辺り、彼女はいいお嫁さんになるだろう。
初めてあったが美人になる要素を大量に持ってるし。
クールな性格をもっと社交的にすればモテモテになるだろうなあ。
……そう思ったら何故か悔しい気持ちになった。
きっと自分の義妹だった『かなめ』と彼女を重ねてい見ているからだろう。
可愛い妹を持つ『兄』ならきっと当たり前な感覚の筈……だ。
「しかし、『お兄さん』か……」
さっきヤシロという少女に呼ばれたのを思い出す。
あんな不思議体験をしたのは始めて……ではないな。
吸血鬼やら鬼やら人狼やら超能力者とか魔法使いなどのオカルトも何度か経験しているからなあ。
「殺されなければ……か」
武偵高時代、特に強襲科にいた頃によく言われたが、挨拶みたいなものだったしなあ。
『死ね!』とか『殺す』は……。
死んだ後にまで、転生した後にまた言われる事になるなんて夢にも思わなかった。
今度こそ、普通の人生を歩めると思ったんだけどなあ。
「白昼夢だった、と思いたいんだが……」
だが、机の上には漆黒の携帯電話が置いてある。
それも二台も。
『Dフォン』と呼ばれた、いわく『運命を導く為の。運命から身を守る為の。俺だけの端末』……そんな大層な物、何故俺が手に入れたんだ?
わからん。
あのモードの俺ならともかく、普段の俺はごく普通の高校生だ。
前世ではヒステリアモードを抱えているせいか、女子を極力避けて生きてきたし、『ネクラ』や『昼行灯』などと呼ばれていたせいか友人もあまりいなかったのに。
それなのに。
「こんな特別っぽいやつが手に入ってもなぁ……」
机の上にあるその携帯を手に取る。
女性にも男性にも受けそうな、シンプルなデザイン。
手に持った感じだとおかしい所はない。
「う〜ん……」
電源を入れて起動してみたが、『Dフォン』というロゴが表示される以外、普通の携帯と変わりはない。
ただ、普通の電話の機能はあっても普通に使うことは出来ない。
プロフィールを見ても、番号やアドレスも載っていない。
Dフォンから自身の携帯にかけても繋がらず、117、110すらかけられない。
「う〜ん……ん?」
どうしたもんかと悩んでいると基本画面に『サイト接続』とあった。
押してみると『8番目のセカイ』とタイトルが表示され。
その瞬間。
パンパカパーン!
「おおっ??」
突然鳴り響いたファンファーレの音に思わずDフォンを手放した。
ベッドの上に落ちたDフォンはブーブーと振動している。
一体なんなんだ、と思いながら手を伸ばすと……『おめでとうございます!』
「おわっ??」
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