■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆仲間の死を糧に
第四十八話 先に進む勇気を
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ステムのバグでスキル熟練度がリセットされようとも、身体に染み付いた動きを捨て、全く新しいスキルを習得しなおすことはできなかったのだ。片手槍と盾の戦士としてこの二年間を生きたアイリアが、短剣使い二人とのパーティーを続けることができないことは、その場の全員が理解していた。
しかし――だからといって、ここで別れるのはあまりにも悲しい。
「せめて――せめて片手槍を手に入れたら、また前みたいにパーティーを半分に分けて戦えるようになるはずだよ。今は無理でも、そのうち――!」
マルバの必死の言葉に、アイリアは哀しく笑った。
「そんなの、わたしが惨めになるだけだよ。どちらにしろ、私だけじゃ攻撃を受けられないよ。前みたいにパーティーを二つに分けるやり方だと、私一人に攻撃が集中しちゃうもん」
マルバは俯いた。アイリアを説得することはできない――そう分かってはいるものの、こんなところで別れるのはあまりにも悲しすぎた。シリカが口を開き――これが決定的な一言だと分かっていながら、これ以外に今のアイリアにかけられる言葉がない自分自身を恨みながら――一言、言った。
「せめて、今日は一緒に帰りましょう」
アイリアは――ただ、頷いた。
帰り道、誰もが無言だった。マルバとシリカは現状を打開できるような策をひたすら考え続けたが、しかし何か良い考えが浮かぶはずもなかった。
角を曲がると、少し向こうで戦闘をしているプレイヤーの一団が見えた。そのプレイヤーのうち、盾を持った剣士が敵の一撃を防御すると、彼は後ろのプレイヤーが攻撃できるように横によけた。しかし――彼の後ろには、だれもいなかった。
敵は目の前に開いた攻撃のチャンスを逃がさなかった。パーティーの内部へ突撃し、後ろで回復待ちをしているのであろうプレイヤーに切りかかる。回復待ちのプレイヤーはあわてて盾を掲げ、その剣を迎え撃った。防御に失敗し、鈍い音が響くと、そのプレイヤーは後ろへ大きくノックバックされ、しりもちをついた。先ほど隙をさらしたもう一人の盾剣士があわてて敵にとどめを刺した。
先ほどのマルバたちと負けず劣らず酷い戦いだった。七十五層の戦いで死者を出したギルドのなかに、いままで取っていた戦術がうまく使えなくなり、ろくに戦えなくなってしまったものがいることはよく知られていたが――マルバたちも、そのプレイヤーたちも間違いなくそうしたギルドのひとつだった。マルバたちは自分たちを見ているような気分になり、更に暗い気持ちになった。マルバは足早にその脇を通り過ぎようとしたが、彼らのうちの一人、しりもちをついたプレイヤーと目があってしまうと、思わずその場に立ち止まった。
――彼女は、サチだった。そう、かつて統制のとれた見事な戦術で攻略組の中でもかなり安定して戦っていた《月夜の黒猫団》は、もはや見る影も
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