■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆奇跡
第四十七話 俺は誰だ
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きな盾と、気休め程度の短い剣を持って、それだけで戦っていた。――いや、あれは剣とも呼べないような代物だったわ。刃が片方しかなくて、素早く振り回すことで攻撃力が上がるように重心が外側にある、妙な武器だった。見た目は剣っていうより鉈だったわ。
一番最初に会った時なんて、普通短剣とか細剣に使うようなスピード型の高級インゴットを持ってきて、これで大盾を作れなんて言ったのよ。一体どんな馬鹿かと思ったわ。出来上がった盾はそれはもうぺらんぺらんで、耐久力はそれなりだけど、完全に防御したって敵の攻撃が三割は抜けるような恐ろしくヘボい性能だったわ。でも結局、あいつは最後まであれ以外の盾を使わなかった。最後――ヒースクリフを倒す時まで」
リズベットはもう一口コーヒーを啜ると、右手を振ってメニューを出し、一枚の写真を取り出した。
「これは、今はもう存在しないギルド《リトル・エネミーズ》の集合写真よ。端っこででかい盾を持ってる奴が、その大馬鹿者」
シノンが写真を受け取り、ミズキもそれを覗きこんだ。白い毛玉をかかえた背の低い少年と、小さな竜を肩に載せた少女、そして槍を杖代わりに立ち黒い子猫を連れた少女が三人並んで真ん中に写っている。そこから一歩引いた位置に大盾の戦士がいた。肩に乗っているのは鷹だ。
「ビーストテイマーだけで構成された四人だけのギルドだった。どいつもこいつもほんっと癖のある戦い方をするもんだから、笑い者にされたこともあったわ。それでも、あいつらはいつも本当に楽しそうに攻略に参加していた。みんな戦場に向かうような雰囲気で出かけていって、それが普通だったのに、あいつらはピクニックに行く雰囲気だった。
一度圏外村へ行くときに護衛をしてもらった時、戦闘をじっくり観察させてもらったことがあったんだけど、もうびっくりしたわ。敵が来るとさっと二組に分かれるの。大盾と槍がタゲを取って、短剣の二人が遊撃するっていうなんとも珍妙としか言いようがないような戦術でね、それでもまったく危なげなかった。あれは、そう……二人ずつのパーティーを束ねた、小さなレイドだった。だからこそ心配なのよ。あの戦術は一人でも欠けていたら成立しない。大盾がいない今、いったいどうしていることやら……」
ため息をつくと、彼女は頭を振った。シノンがミドリを見ると、彼は先ほどの写真を食い入るように見つめていた。
「やっぱり……勘違いじゃない。俺は、この男を知っている。いや……知っているどころの騒ぎじゃない。俺は――多分、こいつとずっと一緒に居たんだと思う」
ミドリはコーヒーを一口啜った。リズベットはミドリの手元を見て、軽く目を見開いた。
「そのカップの持ち方、あいつとそっくりだわ。武器のメンテの度にここでコーヒーを飲んでたけど、いっつもそんな持ち方だった」
ミドリは自分の手元を
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