■■インフィニティ・モーメント編 主人公:ミドリ■■
壊れた世界◆奇跡
第四十六話 再生
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彼は瞬きをした。腹筋に力を込めると、なんとか上体を持ち上げる。身体は重いが、なんとか動かすことができた。あたりを見回して、彼はベットに寝かされていたことを知った。
「こおあ……」
ここはどこだ、と呟いた声は途中で掠れて消えた。ろれつがまわらないのだ。舌の回る速度が、喋ろうとする言葉に付いてこない。何度か試して、数回目にようやく普通に喋れるようになった。
「あっ、やっと起きた」
誰かが声をかけた。彼がそちらを見ると、一人の女性がこちらを見ていた。やや鋭い目つきと、腰に下げた短剣が特徴的だ。服装は……なんというか、異国風だ。
「アンタ誰だ」
「いきなりご挨拶ね。……まあいいわ、私はシノン。そしてここは第七十六層の主街区『アークソフィア』」
「シノン? ……ちょっと待て、お前はどこからどう見ても日本人だろう、その名前は一体……というかそもそも『あーくそふぃあ』って、ここは日本じゃないのか? それと層って何だ層って」
彼はすっかり混乱した様子で矢継ぎ早に質問を浴びせる。シノンと名乗った女性は溜息をついて、呆れた表情で彼を見下ろした。
「懐かしい反応をどうもありがとう。私がここにきたころのことを思い出したわ。……って言ってもたった十日ほど前の話だけれど。あなた、記憶が混乱してるみたいね。名前は分かる?」
「それは分かる。翠川瑞樹だ」
彼が即答すると、シノンは頭を抱えた。何故か恥ずかしそうに早口で喋る。
「……右手の人差指と中指を揃えて下に振るの」
「は?」
「いいから、ほらさっさと試す」
せっつかれて、瑞樹は言われたとおりに指を揃えて振った。チリンとどこからか音がして、メインメニューが出る。媒体も何もないところにいきなり現れたホログラムに、瑞樹は目を見張った。
「一番上にアルファベットで何か書いてあるでしょ? それがあなたの名前よ」
「一番上……エム・アイ・ディー……ええと、ミドリ? これが俺の名前だっていうのか」
ミドリ……いきなり与えられた名前に戸惑い、彼は何度か口の中でその名を唱えた。不思議としっくりくる。
「なんか、しっくりくるでしょ」
シノンが瑞樹の反応を観察していた。心なしか楽しそうだ。
「ああ……一度も呼ばれたことがないはずなんだが、何故か俺の名だと分かる」
「でしょ? 私も最初そんな感じだった。キャラクターネーム、っていうらしいわ」
「キャラクター……? キャラクターって、ゲームの?」
「そうそう。この世界はね、信じられないことにゲームの中なんだって。説明するわね……」
シノンは瑞樹――ミドリに、この世界についての説明を始めた。鋼鉄の城アインクラッドのこと、茅場晶彦のこと、デスゲームのこと。ミドリは時折質問を交えながら、その荒唐無稽とでもいうべき現実を理解しようと
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