第一章
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第一章
面影
好きになったのは。本当に単純な理由からだった。
「可愛いな」
こう思った。本当にそれだけだった。
その娘高見純は唇が赤く大きく目がはっきりとして大きい二重だった。黒い髪は長く肌はきめ細かく和紙の様な色だった。性格も明るくクラスでもよく目立つ美人だった。
若村智哉が彼女に声をかけたのはそんな彼女が可愛いと思ったからだ。その声のかけ方も彼自身が考えてもかなり自然であっさりしたものだった。
「今日の放課後さ」
「あっ、確か」
「若村だよ」
明るく笑って彼女に名乗った。ここでもはじめて声をかけたとは思えない程あっさりとした調子で彼女に答えられたのが自分では不思議であった。
「若村智哉っていうんだ」
「若村君ね」
「ああ。同じクラスのね」
まだ四月の中旬だ。だからクラスメイト全員の顔を覚えているわけではなかったのだ。これは智哉にしろそうだしどうやら純にしろそうであるようだった。
「確かそうだったわよね」
「そうそう。知ってる?」
「悪いけれど知らなかったわ」
純は明るい調子で彼に言葉を返してきた。
「そうだったの。同じクラスだったの」
「ああ。それでさ」
知られていなかったのには少し落ち込んだがすぐに立ち直ってまた彼女に声をかけた。
「今日の放課後時間あるかな」
「まあ一応は」
純は少し考えてから智哉に答えた。この時彼はちらりと純の全身を見回した。赤いブレザーと黒いスカート、ネクタイのその制服はかなり派手でスカートも短い。どうやらスカートは女の子がめいめい上に織り込んでいるようだった。そのせいでかなり目立つ格好になっていてその短いスカートから見える純の脚も制服から浮き出ているスタイルもかなり見事なものだった。それが智哉の青い詰襟とコントラストを為していた。
「あるけれど」
「それだったらさ」
彼は時間があると聞いて一気に攻勢に出た。
「面白い場所があるんだけれど一緒に行かない?」
「面白い場所?」
「うん。駅前のね」
純が興味を示したのを見てさらに攻勢を強めた。
「ハンバーガーショップだけれど」
「ああ、あそこね」
そこのことは純も知ってるようだった。
「あそこがどうかしたの?」
「あそこ凄く安くてしかも美味いんだよ」
にこりと笑って純に言うのだった。
「だからさ。一緒にどう?」
「そんなに美味しいの」
「しかも量もかなり多いんだよ」
話を聞く限りいいこと尽くめの店だ。
「どうかな。それで」
「そうね。一つ聞いていい?」
「何?」
「そのお店ダブルチーズバーガーあるかしら」
彼女が聞いてきたのはこれであった。
「ダブルチーズバーガー。どうかしら」
「ああ、あるよ」
智哉はすぐに答え
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