第三章 四話 激突宇宙
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ており今はファズ・マティには居ない。
「それならいいさ。待とう。阿呆な奴らが攻めてくるまで」
「ハイでゲス」
この二人はもうすぐ近くまで悪魔に等しい存在が迫っていることに気が着いて居ないのである。かわいそうなことであった。
*
ユニコーン ブリッジ
惑星ネロからスイングバイで超加速を行い凄まじい速度で宇宙空間を切り裂くように進んでいたユニコーンは、この度速度を落としてバウンゼィと並進していた。並進しつつギリアスとファズ・マティ攻略の具体的なプランを練っていたのである。
「スカーバレルは相当数の艦船を揃えているそうだ」
「相当数って、どのくらいだ?」
「おそらく百隻単位だろう。どれもこれもが純粋戦闘用とは言えないだろうから実質五十隻程度が相手になるだろうな」
「楽勝ってわけにはいかねえだろな」
「ああ。星図で見るに、このファズ・マティは明らかに天然の要害だ。攻めるは難く守るに易い。迂闊に突っ込めばいかに艦船の性能差があろうとも対抗手段を?がれて料理される」
「メテオストームが途中の航路に流れてやがる。デフレクター積んでなかったらミンチになるな」
「そこは心配ない。問題はメテオストーム突破後の奇襲だ」
「出て来たばっかりとこに仕掛けてくるって?」
「俺ならばそうする。突破後にデフレクターの出力を低下させているところに質量弾を撃ち込めば容易くダメージが通る」
「だろうな。そんじゃ、最大速度でメテオストームを突っ切るか」
「それなら奇襲も受けまい」
プランをまとめながら星図のメテオストームの流れを計算させ、その流動的な隕石の波へどの角度で突入するかを綿密に確認して行く。
「突入角度は流れに対して45度。最大船速で突入すれば突入地点とほぼ変わらない位置で突破可能だ」
「オーライ。そんじゃ、俺は先に行くぜ」
そう言ってギリアスは通信を切り、バウンゼィの最大船速を出してゴッゾの上空を突き抜けて行った。
「さて…面倒なことにならねばいいが、な」
遠ざかるバウンゼィのブースター光を目で追いながら、白野は一瞬だけ感じた嫌な予感を振り払うようにゲイケットに指示を下した。
「ユニコーン、最大船速だ。メテオストームに突入する。デフレクター展開準備も同時に行う」
「了解。機関出力上昇開始、デフレクター第一層まで展開」
粛々と仕事を進めてくれるゲイケットの存在をありがたく思いながら、白野は前方に広がる宇宙空間に目を向けた。
今は静謐な宇宙ではあるが、一度戦いが始まれば一気に喧騒が支配することとなるその空間を。
「そういえば…ベクサ星系での紛争が終わったそうだな」
準備を終わらせたゲイケットが白野にそう話題を振った。
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