第三章 四話 激突宇宙
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野の座っている席の対面に座るバウト。白野は彼のためにビールとスルメを注文する。
一通り酒が進んだあたりで白野は話を促した。
「それで、その面白い情報とは?」
「ええ、この紛争にあたって誰かがルッキオの戦力増強に間接的に協力しているそうです。それも、ルッキオ側からの要請も無しに」
グラスを傾けていた白野の手が止まった。
「ほう?そんなことをして利益が出る奴がいるのか?」
口に出した疑問にたいする答えは既に白野の頭の中にあった。
が、それとは別に妥当な推論もできる。白野が口に出して続けたのはその妥当な推論の方である。
「死の商人辺りが紛争を煽っている、と?」
紛争が長引いて喜ぶのは武器を売る商人達である。艦船、武装、戦闘用内装などなど大規模な紛争は武器商人達にとって同時に大規模なマーケットでもある。
「いや、それは少し違うようです」
しかし、バウトはその推論を否定した。
「ルッキオに敵対するアルデスタの方ではこのような誰がやっているのわからない戦力増強は無いそうです。ルッキオ政府は無邪気に喜んでいますが…」
「戦力比が崩れれば、全面衝突までそう時間はかからないだろうな」
「ええ。問題は、その異常に肥大化した戦力を一時的にとはいえルッキオ政府が養えるだけの経済基盤があるかどうかです」
軍隊はとにかく金を食う。よく使われる表現ではあるが全軍の兵士一人一人が一杯のコーヒーを飲むためだけでも莫大な費用が掛かる。
白野が見たところ、ルッキオ政府は不況では無いがお世辞にも繁盛しているとは言い難い。そもそも繁盛しているようなら紛争の危険を犯してまでベクサ星系に固執はしないだろう。
ルッキオ政府が常識的な範囲で保有、稼働させ得る最大限のの艦船は大体10隻から50隻といったところだろう。今はそれがどんどん増強されているらしい。短期的ならともかく長引けばルッキオ政府の財政は回復不能なダメージを被るに違いない。
その辺りを理解しているかは微妙なところである。
「ないだろうな。このままだとルッキオは遠からず借金抱えて立ち往生といったところか」
「その可能性は高いでしょうね。哀れなことです」
憐憫の意を込めた台詞を言うものの、バウトの視線はソロヴァンの金額表示を見つめていたから心情の比率がどちらにあるかなど考えるまでも無いことだった。
二人はその後、雑談しながら料理と酒を楽しみマスターにチップと代金を渡して酒場から出た。今後の予定は特に無く、海賊退治をしながら気長に優秀なクルーを探すつもりであったのだが、その予定はしばらく狂い続けることとなる。
*
ユニコーン ブリッジ
ルッキオの地上からユニコーンに戻って来た白野は、ブリッジに詰めていたゲイケットからギリアス
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