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優しさをずっと
第五章
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「そうなんですか。やっぱり」
「おかしいかなって僕達思っていたんですけれど」
 おかしいとは思っていてもそれを行動に移すことは困難だ。まだ小学生なのだ。それでどうして実際の行動に移せることができようか。おかしいと思っただけでもかなりのものだ。
「じゃあやっぱり」
「先生が負けたら僕達、また」
「何度も言うよ」
 今までにも増して強い決意を込めている先生の声だった。
「先生は負けないよ」
「負けないって先生・・・・・・」
「それでもあいつは」
「強さは腕力じゃないんだ」
 これは先生の強い信念の言葉であった。
「剣道や柔道の段位でもないんだ。そんなものは強さの証明にはならないんだよ」
「じゃあその強さって」
「何なんですか?」
「また言うよ」
 既にこのことは告げているというのである。
「それは」
「それは?」
「心だよ」
 やはり答えはこれであった。
「心なんだよ。本当の強さはね」
「心ですか」
「そう、優しさなんだ」
 これこそが彼の信念であった。決して揺るがない信念であるのだ。
「それはね。あの人には優しさがない」
「そうですか」
「君達は生徒だ」
 教師と生徒、その関係である。
「そして人間なんだ。人間は優しさを忘れてはいけないんだ」
「優しさをですか」
「だから僕は負けない」
 あくまで平生に立ち向かうというのである。
「何があっても。いいね」
「負けないんですか」
「平生先生にも」
「安心して見ていて」
 微笑んで生徒達に顔を向けて告げた。
「明日はね」
「はい・・・・・・」
「わかりました」
「それじゃあ皆集まって」
 生徒達がこくりと頷いたのを見て微笑んで集合をかけた。そして生徒達を正座させて自分も向かい合って正座するのであった。

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