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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第6話 士官学校 その4
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に間違いだ。まず最優先目標を達成するという使命をおざなりにしてしまう可能性がある。たとえばホーランドを襲撃した敵艦隊は、あくまでも戦略シミュレーション上で構成された仮想人格に率いられた艦隊だ。動きも緩慢で、ゲームなら平均的モブ敵キャラとも言うべき存在だ。もし敵艦隊が金髪の孺子に率いられていたら、あるいは色目違いの女たらしや体操選手や黒猪だったら? 俺だったら戦うことなく早々に逃走を選択するだろう。あるいは輸送艦を後方に待避させる時間稼ぎの為に、撤退を前提とした防御戦を挑むかもしれない。

 つまりは『被害が出ることが前提』という考え方が、俺にはなかった。多少の被害があっても目標を達成し、なおかつ不確定要素を排除できることが『最上』ということだ。たとえその被害が『自分のもっとも信頼する部下の戦死』であったとしても。

 前世であれば、確実に取れる契約を取ってくるだけでなく、他にも何件かの営業成績を上げるというのは十分評価に値しただろう。勇み足をして確実に取れる契約すら失ったとして、会社から罰を受けたとしても命まで取られるわけではない。だが戦場ではミスをすれば容赦なく命を奪っていく。

 そういう現実に、俺が耐えられない。シトレはそう考えて『軍人には向いていない』と言ったのだろうか?
 自分の手の届かない範囲での戦略前提条件により、目標を達成させるために損害が出る、ということに耐えられないだろうと。

 もしそうだとしたら、俺を舐めるにも程がある。なにしろこちらは『一度死んだ』身だ。怖いのはチョコレートの中に狡猾に隠されたアーモンドだけであって、新たな人生の目標である『同盟の生存と自身の生存』を達成する為には、『多少の被害』など恐れない。もっともなるべくその規模を小さくしたいとは思うが。

 結論が出た限り、シトレにはそれなりに返事をしなければならない。事務監に校長のアポイントを取ってもらい、俺は再び校長室でシトレと向き合い、その事を話した。だが今度もシトレの返事は同じだった。

「君は明らかに軍人向きではない。トラバース法の制約がないのだから、今からでも飛び級で一般大学へ進学して、官僚でも政治家でも目指すべきだと私は考える。若干危険な面も見受けられるがまずは許容範囲だ。君にはその分野での才能と能力がある」
 一度溜息をついた後のシトレの言葉の節々に、若干なりとも苦渋が込められていることが俺には分かった。
「これは私個人の意見だ。君の人生だから君が決めることであって、私が本来とやかく言うべきことではないのも確かだ。だが軍という組織は、君の貴重な才能と能力を潰す可能性の方が極めて高い。敵の砲火が先かもしれんが。……まぁ軍組織の中で高位にいる私がこう言うのもおかしな話だがね」

「……自分は軍人ではなく政治家向きだと、仰られるのです
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