ユグドラシル編
第14話 “シャローム”
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た。
唐突に撫でられた碧沙は照れつつも、撫でた手の主、裕也をじっと見上げた。当の裕也は笑顔で小首を傾げる。
この人と、子を成せと、言われた。それが人類のためだと。
(いい人なのは分かる。わたし自身、この人のことは嫌いじゃない。でもそれだけで子作りしろって言われてできるか……無理かもしれない)
自分一人の命より人類70億人のほうが重いに決まっている。巴にそう宣言しておきながら、碧沙は我が身可愛さから裕也との関係に踏み切れずにいる。
裕也はそんな意気地なしの碧沙に、文句も言わず優しく接してくれる。
裕也に対して湧く愛情は、異性へのものではなく、家族愛に近かった。貴虎とも光実とも違う、3人目の兄のようだとさえ。人見知りの自分が、巴以外にこうも滑らかに接せる他人はいない。
(いつか、ちゃんと好きになりたい。産まれる子には、お父さんとお母さんが愛し合ったから産まれたんだよって、胸を張りたいから)
兄たちの愛情にくるまれて育った少女だからこそ、出せる結論だった。
碧沙は頭から離れた裕也の手を追って握り、笑った。
「わたしも、がんばりますから」
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