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ロード・オブ・白御前
ユグドラシル編
第12話 白鹿毛vsマリカ! 取り戻すために
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ったわね』

 桃色のライダーが歩いてくる。こつん、こつん。ホールに反響する足音は、死刑宣告にも似て。

(彼女が強いんじゃない。わたしが……わたしが弱いんだ)

 巴は歯を食い縛った。
 幼い頃に武術をやっていたといっても、今やどこにでもいるただの中学生。戦闘のプロフェッショナルたる湊耀子が相手では、実力はそれこそ雲と泥。

 どこかで分かっていた。関口巴が戦士でも何でもないことを。
 だから、今まで何度も変身すべき場面があったのに、そうしなかった。自分の隠した弱さが曝されるのが怖かったからだ。

『これで終わりよ』

 桃色のライダーが巴の前に立ち、弓を大上段に振り上げる。その弓の切れ味をたったさっき知ったばかりだ。

(待ってよ。ねえ。だって特撮とか魔法少女ものとか、変身が解けたキャラに攻撃するなんて、ありえないのに)


 ――ちがう。
 ここは、現実だ。これが、現実なのだ。


 桃色のライダーが弓を振り下ろした。

「いやあああああああ!!」

 巴は頭を抱えて丸まった。恥も外聞もなかった。ただ恐ろしかった、痛みが、死が。碧沙が見ていることさえ忘れた。

「湊さん、やめてぇ!」

 碧沙が、桃色のライダーの弓を持った手にしがみついた。

「わたし、何でもしますから! 言うこと聞きますから! これ以上、わたしの親友を傷つけないでぇ!」
『ここから出て行かない? ちゃんとプロフェッサー凌馬の言うことを聞く?』
「…はい…っはい…」

 桃色のライダーが腕を下ろすと、腕がほどけた碧沙がその場に座り込んだ。

 巴は肘を使って上半身だけを立て、碧沙に触れようとした。だが、思い留まった。
 自分は今、最低の裏切りを彼女に対して働いた。
 守ると言ったくせに。一緒に行こうと言ったくせに。

 碧沙はそっと巴の手を取った。

「こわい思いをさせてごめんなさい。痛い目に遭わせてごめんなさい」

 巴の手に落ちる、碧沙の涙の粒。それは巴という邪悪を責め苛む神水のようだった。失望された。誰でもない碧沙に失望された!

「ああ、あ…っ」
「巻き込んじゃって…ごめんなさい…!」

 変身を解いた耀子が碧沙の肩に後ろから手を添える。碧沙は巴の手を離し、立ち上がった。
 ふらつく碧沙を耀子が支え、二人はホールを出て行った。




 巴は拳を振り上げ、床を力一杯殴った。衝撃で目尻に溜まった涙が飛び散った。

「うわあああああああああ!!!!」
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