第十章
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第十章
「私ではありませんが」
「いえ、貴方です」
「私が!?」
「彼等にそうさせたのは貴方ですよ」
にこやかな笑みで先生に言うのだった。
「ここでそうさせたのは」
「そうでしょうか」
「貴方はその優しい心でこの子達を守ろうとしました」
校長先生は生徒達も見つつまた述べた。
「そしてそれがこの子達にも伝わり」
「それでですか」
「心は伝わります」
校長先生の言葉は続く。
「相手に。優しさもまた」
「じゃあこの子達は」
「そうです。貴方の優しさを知っています」
その温和な笑みで頷きながらの言葉であった。
「それを何処までも」
「そうなのですか」
「これからもの優しさを伝えて下さい」
先生の肩を叩くような言葉であった。
「剣道部の顧問として」
「剣道部のですか」
「あの男は既に学校にいません」
平生をあの男と切って捨てた。その程度だとはっきりと言っていた。
「ならば貴方がです」
「ですが私は」
「大切なのは心ですね」
先生の言葉をそのまま返してきた。
「必要なのは」
「はい、そうです」
「答えはそれです」
にこやかな笑みでの言葉だがそれはしっかりとしたものだった。
「それこそです。ですから」
「この子達を預かっていいのですね?」
「優しさがあれば」
この言葉がまた述べられる。
「それで充分です。ではこの子達と剣道部を頼みましたよ」
「はい」
校長先生の言葉に明るい顔で応えることができた。生徒達はその先生の顔を同じ明るい笑顔で見ている。今彼等も優しさをその心にはっきりと宿したのであった。阿倍先生と同じく。
優しさをずっと 完
2008・10・16
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