ユグドラシル編
第10話 Calling
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さ、――癒してくれた。お前がいたから最後の一線は超えなかったんだって、今は思ってる。だから俺は、いてくれてよかったって、言うよ、トモに》
「――っ」
それは碧沙から、親から、――誰からでもいいからとにかく欲しかった言葉だった。
「生きていてくれてありがとう」。ずっとずっと欲しかった、関口巴のレゾンデーテル。
《トモ? どうした? ま、まさか泣い》
「泣いてませんから」
《切り返し早っ! ……まあとにかく俺が言いたいのは、俺だけじゃなくて、ヘキサもそう思ってんじゃないかってこと》
「そう、でしょうか」
《俺が保証する。お前は何もしなくても、居るだけでいいんだよ。誰が何と言おうとな。だから、ヘキサだってトモダチやってんだろ。――ちょっと妬けるけどな。俺はできなかったから》
巴は思い出した。初瀬のレイドワイルドは、盟友だったインヴィットの城乃内の支援を受けられず解散した。
「城乃内秀保さんなら今は凰蓮・ピエール・アルフォンゾの下でパティシエ修業させられてますよ」
《マジか!? あれから見ねえなあと思ったら、そんなことしてたのかよ、あいつ。てかパティシエ! 似合わね〜》
初瀬が電話の向こうで大笑いしている。自分から話題を振っておきながら、巴はきょとんとした。てっきり城乃内秀保への恨み節が炸裂するとばかり。
《あ〜、腹攣るかと思った……んで、トモはどうしたいんだ? その量産型ドライバーとかいうの》
ドライバーを学生鞄から出し、黒光りする輪郭をなぞる。
「亮二さん……は、欲しくない、ですか」
初瀬のためにこれを持ち出したかと聞かれれば、全部がそういうわけではない。これを持たなければ、いよいよ碧沙とのつながりが切れてしまう気がしたのだ。
《――どうだかなあ。今、モーレツに黒影になりてえかって言われたら、迷う》
「すみません。無神経でした」
会話の端々から、彼が黒影だった自分をどう感じていたか知っていたのに。これは巴の非だ。
《それで、お前は?》
「……戦うのは人並みに怖い、です。本番には強いほうなんで、インベスと戦う時にはスイッチが切り替わるみたいなんですけれど。ユグドラシル・コーポレーションをどうにかしようとしてる紘汰さんと戒斗さんには、ちょっと、付いて行きにくいです」
《あ〜。あいつら、人と違ったテンションで生きてるかんなあ。戒斗とか特に。イヤなら無理して付いてかなくていいぞ》
「でも、それだと碧沙が……」
放課後ではこの話題に触れられない。碧沙の大事な日常を壊せない。
ならばユグドラシルにアタックすればいいのだ。
碧沙が何をされているか。内容によっては会社一つ潰そうが碧沙を助け出せばいい。ユグドラシルも人類も、碧沙と比べれば及ぶべくもな
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