ユグドラシル編
第6話 CASE “Yuuya Sumii”
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」
紘汰は思い出す。一度、インベス対策のためにチーム鎧武で動いた時だ。自分と光実は、ヘルヘイムの植物を燃やすユグドラシルの部隊を目撃した。
あれは、証拠隠滅だけでなく、植物の侵食を食い止めていたのか。
「いずれ地球にはヘルヘイムの植物しか生らなくなって、人類は総インベス化。ユグドラシルはそれを回避して少しでも人類を生き延びさせるために研究をしてるんだとさ。実際のとこ、研究のやり方はえっぐいヤツばっかだけど。ちょいごめんな」
裕也はしゃがみ込み、ベッド下から何かを引っ張り出した。黒い革のベルトらしき物だ。
「これ、俺が知らない間にまたインベスになって暴走した時用の、拘束具。寝る時は毎晩着けられてる」
「な…!」
まるで囚人のような扱い――否。角居裕也はまぎれもなくユグドラシルの囚人なのだ。紘汰はようやく思い知った。
「お前も見たろ。俺がインベスになってたの。インベスの中身はな、俺たちと同じ人間なんだよ」
「人、間」
紘汰はふらつき、ベッドにぶつかってそのまま座り込んだ。
自分たちが殺してきたモノが、ただの害獣ではなく、人間だった。その事実は葛葉紘汰の精神に甚大なダメージを与えた。
「俺たちの世界側の人間ばかりじゃないだろう」
戒斗の声は紘汰と対照的に冷静だった。
「でないと“森”にいるインベスの説明がつかない。角居。あの森の正体は何だ」
「それは俺にも分からない。ユグドラシルの誰にも。ただ、俺たちと同じように、文明があって、文化があって。人間が住んでた世界ってことだけは確かだ。森のインベスの中身は、森が現れる前の向こう側の人類――」
ぴたりと裕也が言葉を絶った。裕也は胸元を押さえて前屈みになっていく。
「おい、裕也、大丈夫か!?」
「ち……かづく、な!」
人間とは思えない力で振り払われ、尻餅を突いた。慌てて裕也を見ると、眼球は赤く明滅し、肥大化した両手に鉤爪が伸び始めていた。
これが、インベス化。
突如として天井にあったランプが赤く光って回転し始めた。ブザーも鳴り始めた。
「じきに、ッ、人が来る…だから、にげろ…紘汰! 駆紋!」
「裕也っ」
足が裕也のほうへ戻ろうとした。だがそれを、戒斗が紘汰の腕を掴んで止めた。
「これ以上は無理だ」
「くっ」
ここで留まるほど紘汰も馬鹿にはなれない。駆け出した戒斗に続いて紘汰も走り出した。
かつん、かつん。無人の廊下に二人の少女のローファーの音だけが反響する。
「ヘルヘイムのこと、知ってるの? 政府とか国民とか」
碧沙は痛ましげに首を振った。
「パニックになるから」
「それもそうよね……」
例えば巴の両親のような人
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