ビートライダーズ編
第13話 巴と初瀬 A
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と話したほうがいいんじゃねえかって思っただけだ」
巴が初瀬を見る目つきが変わった。苛烈に初瀬を「裏切り者」と責め立てる目。
「あなたもですか。二言目には親、親、親。しかも、希望をチラつかせた上で突き放すなんて、ほんっとサイテー」
「いーよ、サイテーで。んで、俺みたいなサイテーなオトナになりたくなかったら、ここまでにしとけって言ってんだ。俺と来たら、本当に取り返しつかなくなるぞ」
不本意ながらも軽く凄みつつ、スカート下の太腿に触れた。巴は飛びずさった。
「ほら、こういうことになる」
男の悪意は何も妙齢の女にばかり向けられるものではない。初瀬自身がいい例だ。彼女の共感に付け込んで、連れ回して攫おうとした。
それでも巴は、逃げるまではしなかったから。
「ケータイ出せ」
「――――」
「盗りゃしねえから。ほら」
巴が出したスマホと自分のスマホを突き合わせ、赤外線通信でアドレスを巴と交換する。
「好きな時にかけて来いよ。グチ聞くくらいならできるからよ」
それでも巴の表情は晴れない。
初瀬はそんな巴に手を伸ばし――――巴にデコピンを食らわせた。
「っ、たぁっ……何するんです!」
「別に。これに懲りたら悪いオトコに付いてくんじゃねーぞ」
弱い自分では彼女に触れられない。斬月のように巴を守るだけの強さは、今の初瀬にはないから。
巴はしばらく階段に佇んでいた。やがて学生鞄と汚れたぬいぐるみを持って、階段を降りて行った。
路上に着いてこちらを見上げた巴に、初瀬は手を軽く挙げた。
「じゃあな、巴」
さびしくて、それでも笑って、初瀬亮二は初めて恋した相手を送り出した。
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