ビートライダーズ編
第13話 巴と初瀬 A
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ニックブームでバラバラに爆散させた。
初瀬は終始、圧倒されるだけだった。巴を救うこともできず、木偶の坊のように立ち尽くしていた。
(俺が強くないから? 俺に力がないから? 違う。俺はさっき諦めた。インベスに食われそうになった巴を見て、俺じゃ助けらんねえ、無理だ、って。だから俺じゃ巴を救えなかった)
悔しい。
戦極ドライバーを失って初めての感情だった。
悔しい。悔しい。何より自分自身が悔しい。
『現場の処理をする。一旦ここから出ていてくれ』
「はい。――亮二さん、行きましょう?」
巴に背中を軽く押され、初瀬は歩き出した。
頭の中には、斬月が鮮やかに、力強く、インベスを討ち取った場面がリフレインする。
インベスが出現した現場から充分離れたところで、初瀬は感情に任せて手近な壁を殴りつけた。客が逃げた今、見咎めるのは巴だけだ。
「亮二さん!?」
最初に止めたように巴は初瀬の腕を掴む。だが初瀬のほうは、もう片方の手で壁を殴りつけた。彼女の気遣いより、己の中に渦巻くものを吐き出すことで頭が一杯だった。
「…っくそ、くそ…何なんだよ、何なんだよあいつ…! あんなん敵うわけねえじゃねえかよ…!!」
「亮二さん、やめて!」
背中から巴が抱きついた。
初瀬はようやく壁を殴るのをやめ、ずるずると崩れ落ちた。
「ち…くしょ…ちくしょぉ…!」
コドモのように泣きじゃくる初瀬に、巴は無言で寄り添い、背中を撫でてくれた。
無人の構内に、一人の男の慟哭だけが反響していた。
「――落ち着きました?」
「ああ…その、ワリ…変なとこ、見せて」
駅構内から場を移し、初瀬は巴と並んで駅へ登る階段の隅に腰を下ろしていた。外に出たのはもちろん初瀬が泣き止んでからだ。
彼らは電車の復旧を待っているが、インベスがあれだけ騒ぎを起こした後で、それは難しい。別の駅から出発することも考えねばならない。
空を見上げれば、とっぷりと藍色に満ちた天球に星々の光。
「なあ」
「はい」
「お前、俺と一緒に来たら、いつまで帰らないつもりだったんだ」
巴のような一女子学生には、この時間まで遊び歩く自体が問題のはずだ。加えて男の家に(実家で家族はいるとはいえ)無断外泊。立派に家出として成立する行為だ。
彼女が家に帰りたくない気持ちはイヤというほど理解してやれるが、その気持ちを利用して彼女を自分の逃避行に利用しただけではないか。今の初瀬にはそれがよく分かっていた。
「あなたも、わたしのこと、イヤになったんですか」
むしろ逆だと、伝えたくても伝えられない。
「そーじゃねえよ。お前は俺と違って未成年だろ。親とちゃん
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