第一部 学園都市篇
第3章 禁書目録
七月二十五日:『幻想殺し』U
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
たけどさ」
「そっか……よかった。ありがと、こーじ!」
「どういたしまして」
心の底から心配していたのだろう、当麻の無事を聞いて、ほうっと安堵の息を吐いた。
──そう、『禁書目録』。かつて、師父から聞いた『イギリス清教』の『必要悪の協会』の魔術師であり……『十万冊以上の魔導書を暗記している』筈の少女が、だ。
最初は警戒した。何せ、その『必要悪の協会』所属の魔術師を相手にした直後だし、当の上条は彼らにこうされたのだ。しかし、どうやら何らかの事情で彼女もまた、その『必要悪の協会』に追われているらしい。
「……とうまの右腕は、『幻想殺し』だから。魔術を、『殺し』ちゃうんだ。私の法衣もそれでだめにされちゃったんだ」
「『幻想殺し』ねぇ……まぁ、そうでもなき説明つかないけど」
プルタブを開け、ぐいと煽る。喉を滑り落ちる冷たい麦芽の苦味と酒精のもたらす熱が、腹の底から体温を上げていく。
久々に感じるその、腹の中を優しく掻き毟られる感覚に、くうっと唸りながら。
「とうまのとこ、もう行っても大丈夫だよね? ね、こーじ」
「あぁ、勿論。付いててやりな。けど、騒ぐのは」
「うん!」
最後まで聞く事も無く、インデックスは当麻の元へと駆けていく。苦笑しながら、換気扇を回して紫煙を吹かしつつ麦酒を煽る。
「やれやれ、あんな可愛子ちゃんに好かれてまぁ……羨ましいねぇ」
幸い、明日は『風紀委員』は非番。『警備員』や『アイテム』の招集が無ければ、一日、時間は空いている。帰り付いてから一眠りしても昼には目が醒めるだろう。
携帯を弄る。よく見れば、義母からメールが届いていた。日時は二十二時頃、一番忙しかった時間だ。だから、メールで済ましてくれたのだろう。
「……何々、『情けは人の為ならず』?」
それだけ。他には何もない。しかし、だからこそ考えさせられる格言だった。
「……そうだなぁ。そういや、恩返ししなきゃな」
そのまま、携帯を弄る右腕に目を遣る。前腕に巻かれた、黒子のリボンに。確か、同じく非番の筈。
明日の、一応の『予定』を立てる。まぁ、まだまだ『未定』だが。
「当たって砕けろ、だな」
携帯を閉じ、居間に。一応、乗り掛かった船だ。取り敢えず、小萌が戻るまでは待とうと決めて。
「そら、今回は特別だからな」
『てけり・り。てけり・り♪』
煙草を、麦酒をショゴスに与えて。それが平面の影に、玉虫色の煌めきと血涙を流す瞳の海に飲み込まれるのを待たず。
当麻を心配そうに看護す
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ