ビートライダーズ編
第11話 巴と初瀬 @
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ん底」
「正確に述べるならついに学年最下位になりました」
「あ〜……」
初瀬も学生時代は成績が低迷していたからよく分かる心境だ。帰ったら親にどやされる、かといって帰らないだけの度胸もない。おまけに初瀬亮二には成績優秀な姉がいたので、親に比べられるのがいつも腹立たしかった。
「いっそ遠くへ逃げてしまいたい気分ですよ」
「……それもいいかもな。俺も。どうせダンスも仲間も力も失くしたんだ。この街にいてもしょうがねえか」
口にしてみるとそれはこの上ない妙案の気がした。
「沢芽が地元じゃないんですか」
「俺、地元は本土。大学行くのにこっち来たんだよ」
もっともその大学も、ビートライダーズ活動にかまけて全く行かなくなったが。
「一緒に来るか?」
「よろしいんですか」
「物欲しげに見てたのお前のほうだろ」
逃げ場がある初瀬を、巴は確かに羨みを露わに見上げていた。
「物欲しげになんて、してません」
「嘘つけ」
それも初瀬にはよく分かる感情だった。家には味方がいないから、へらへらと実家に帰る同級生を憎らしく感じたし、今ではそれが嫉妬だったと分かる程度には大人になった。
関口巴は昔の初瀬亮二と同じだ。
どこかへ行ってしまいたい。ただ、それだけ。
それが分かると、初対面から遠い存在だった彼女に、親近感さえ湧いてきた。
初瀬が立ち上がると、一拍遅れて巴も立ち上がった。
意趣返しのつもりか、巴はその細腕の片方を、するり、初瀬の脇に滑り入れた。初瀬の脈は一気に跳ねた。
「エスコートしてくださいませんの?」
こいつ魔性だ、と気づいた時にはすでに遅し。初瀬はとうに関口巴に陥落していた。
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