ビートライダーズ編
第10話 少女の“変身”
[3/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
中に縦に開いたチャック。向こう側は赤い壁の研究所らしき内装が見て取れた。
貴虎がそのクラックへと歩き出す。碧沙がごく自然に巴と腕を組み、引く。一緒に行こうと言外に伝えている。巴は碧沙に腕を引かれるに任せてチャックを越えた。
女子が暗い時間に一人で街を歩いて帰るのは防犯上よろしくない。
貴虎は大真面目に言い、帰りの車を手配すると申し出てくれた。
「お前ももう帰りなさい、碧沙」
「はい。兄さんは?」
「まだやることがある」
「分かりました」
やりとりだけでも上流階級だ、と横で黙って聞いていた巴は思った。そして所詮、自分は本来なら碧沙と並び立てない庶民なのだと痛感した。
ユグドラシル・タワーから出て、地下駐車場で迎えの車を二人で待った。
「波乱万丈のクリスマス・イブだったわね」
冗談めかして言うと、碧沙は、
「そうね」
笑顔で答えた。その笑顔に巴はほっとした。
ほっとしたから、巴はウェストポーチに入れておいた物を臆することなく出すことができた。
巴は、掌に載る程度の大きさの、ラッピングされた小箱を差し出した。碧沙は不思議そうに小箱を受け取った。
「あ、もしかして……クリスマスプレゼント?」
「ええ。ちょっと早いけど、メリークリスマス」
「巴!!」
碧沙が巴に抱きついた。柔らかい。肌も髪も何もかも。
「嬉しい。友達からのクリスマスプレゼントなんて初めてよ。大好き、巴。ありがとう」
「大した物じゃないけれど」
「ううん。巴がくれた物なら、どんな宝石やブランドより価値がある」
碧沙は小箱のリボンをほどいて中身を取り出した。
桜貝を模したアクセサリーと白いタッセルの、イヤホンジャックだ。高い品は買えない巴なので、フィーリングで選んだ。
「すてき――」
「お気に召した?」
「とっても。ありがとう、巴」
碧沙はイヤホンジャックを小箱に戻し、こつん、と巴の肩に頭を預けた。気に入ってもらえて巴も安心した。
「巴。わたしからもプレゼント、あげていい?」
体を離すと、碧沙はバッグから、何と戦極ドライバーとアーモンドのロックシードを取り出した。
「ちょ……これ、持ち出していいの?」
「もうすぐ改良品が完成するから、1個くらい大丈夫でしょう」
大胆にも程がある。巴は魚のように口をぱくぱくさせて親友を見返した。
「人助けしろとかじゃない。そんなことしないで。赤の他人のために巴が傷つかないで。ただ、自衛のため。巴自身がインベスに襲われた時に使って。巴が自分で身を守れるって思ったら、わたしも安心できるから」
「……そういうことなら」
巴は碧沙から、戦極ドライバーとロックシードを受け取り、ウ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ