暁 〜小説投稿サイト〜
戦国御伽草子
参ノ巻
死んでたまるかぁ!

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しは思わず両手で顔を覆った。



 しかし次に聞こえた惟伎高の声は意外なものだった。



「かの者、(ヒナ)、と」



「雛?」



 あたしは音を立てず盛大にずっこけた。



 あ、あたしそんな名前名乗りましたっけ〜?



 ひ、ひ、ヒナ、ね…。ピィで、ヒナ。安直というか、何と言うか…。いや、真名を言われなかったのは良いことなんだけどさ。けどさ…ねぇ。なんか、もっとこう…。ねぇ?



 いや、惟伎高があたしのことどう思ってるかが実によくわかる仮名(かりな)だわ。



 きっと奴の中では、あたしはまだ巣でピーチクパーチク(さえず)って、その手からエサを食べるよちよち歩きの雛なんでしょうよ。



 あたしはなんだかどっと疲れて、とりあえず見つかる前にと、よろよろしながらその場を離れたのだった。
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