参ノ巻
死んでたまるかぁ!
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くにいるのに。高彬が苦しんでいて、あたしはそれを解決する術を知っているのに、何も出来ないのだ。何もしないことが、巡り廻って高彬を救うことになる。そうわかっていても、今高彬の悲しみを癒やせないのが、辛い。
高彬…。
「実はこちらの近辺で、不審な女を見たという話を聞きまして、急ぎ参った次第で御座います。庵儒殿、何か、何でも良いのです、心当たりはありませんか?」
あたしはどきりとした。
そ、そ、それってあたしのことかしら?人の口の端に上るほど不審な事した覚えはないけれど!
「不審な女、とは?」
「雪という名の侍女と偽り、前田の姫の元へ毒湯を持ってきた女を探しているのです。その女を、この身に代えても、探し出したい」
あたしはあっと声を上げそうになった。
そういえば、あたしたちのところに毒湯を持ってきた侍女はそんな名を名乗っていた気がする。高彬は、その侍女を探しているの?
「高彬殿…残念ですが、貴殿の仰る不審な女に心当たりはありません」
惟伎高は迷わずそう言った。
惟伎高何を…ここにいるじゃないのよ、不審な女が雁首揃えて二人も。抹はいいとしても、あたしは自分がまぁまぁ怪しい自覚はある。夜の川で青く燐光しながら流されてるような女よ?どう考えてもアヤシイ。
まぁ…信用してくれてるって事よね。
「そう…ですか。いえ、ここは喜ぶところなのでしょうね。庵儒殿のお近くに不審な者なしとわかったのですから」
「気を落とさないで下さい。わたしもそのような噂話に注意を払いましょう」
「ありがとうございます。望む情報は得られませんでしたが、こうして義兄上のお元気そうなお顔を拝見出来ただけで、来た甲斐がありました」
「そう言って頂けると助かります。遠路遙々お疲れでしょう。ごゆるりと休まれて下さい。わたしは、夕餉の準備をして参ります」
「それはありがたいですが、義兄上、その前にひとつだけ…この寺に、尼君様はおられますか?」
惟伎高が出てきそうだしこれ以上ここにいるのもまずいかなとあたしが腰を上げかけた時だった。不意に高彬が、そんなことを言ったのだ。あたしは動きをぴたりと止める。
「尼?どうしました高彬殿。なにか粗相をしたものがおりましたか?」
「粗相…いえ、粗相というほどのものではないのですが…寺の前の道で一人の尼君様とお会いしたのですが、わたしが驚かせてしまったようで…一目散に逃げられてしまいました。その様子が…ふふ、懐かしい人と重なりまして。一度お話してみたいのですが、何せ
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