第三章
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か」
その言葉を意識せずにはいられなかった。
「それで何処に入るつもりなのかしら」
「入るって?」
「だから学部よ」
にこりと笑って問う。
「何処なの?」
「はい、それは」
慌てて咄嗟に出た言葉は。ほぼ無意識にこう述べてしまった。
「文学部です」
「あら、そこまで同じなの」
「ええ、まあ」
答えたその瞬間に自分でも唖然としたがもう遅かった。言ったが最後であった。
「私今一年なの」
「僕二年です」
「じゃあ一緒になれるわね」
「ええ、そうですね」
その言葉に頷く。
「じゃあ」
「そうよ。待ってるから」
微笑みながらの言葉は何よりも綺麗に見えた。それだけで隆一は心が嬉しくなるのを感じた。
「いいわね」
「はい。けれどその間は」
「どうするの?」
「ここで。アルバイトしていていいですか?」
彼はそう百合子に問うた。
「あの、こんなこと言ったら何ですけれど」
「どうしたの?」
「僕、何か今のお話で百合子さんと一緒にいたくなったんです。一日の少しの間でも」
「えっ」
この言葉は百合子にとっても思わぬものであった。つい言葉が出てしまった。
「それって」
「あっ、今の言葉って」
言い出した本人も気付いた。思わず赤面してしまう。
「あれですよね。何か」
「そうよ。それって」
百合子も照れ臭そうに笑う。けれど悪い気はしなかった。
だからこそ言った。隆一の方を向いて。
「けれど。悪い気はしないわ」
「そうなんですか」
「ええ。だからね」
そっと隆一に囁いてきた。目は彼に向けられている。
「バイト、辞めたりしないでね。それで学校も」
「はい、絶対合格しますから」
「待ってるわよ」
二人は顔を見合わせて微笑み合う。その時お互いの黒子と痣を見る。しかし二人は気付いてはいなかった。その黒子と痣こそが彼等を導いたことを。それがわかることはないだろう。しかし二人は巡り合うべくして巡り合ったのだ。それこそが運命であった。
輪廻 完
2007・2・4
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