DAO:ゾーネンリヒト・レギオン〜神々の狂宴〜
第八話
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顔をくしゃりと歪めて、泣き出しそうな声で――――
「みんな……ダメなんだ……そんな、そんなことしたら……」
『いかにも。不可能だ』
その時だった。どこからともなく、声が聞こえたのは。びくん、とユウキの体が跳ねる。
「この声……」
その声は、かつて全世界に届いた声。全ての仮想世界は我らの手中に納まる所となる、と宣言した、青い、邪悪な女神の声。
「ノイゾ、様……」
『不可能だよ、レギオンポーン。貴女はただの駒にすぎない。我が兄の掌の上で動き、それに準じるだけの存在だ。故に――――その意向を伝える。『《絶剣》、《惟神》の使用を命ずる』―――恭順せよ』
その瞬間――――ユウキの右目が、紅蓮い光を放った。
「う、ぁ、ぁ、ぁあああああああッ!」
ユウキが悲鳴を上げる。その足元に奇怪な魔方陣が出現し、同時にユウキの体中に蛇の伝った後のようなあざが浮かび上がる。
『十九八七六五四三二一〇』
「い、『いと尊き我が主に、この契約を捧げます』」
ユウキの口から、苦しそうに祝詞が紡ぎだされる。
「『それは時すら超えた超越
ありとあらゆるすべては還り
今ここに唯一の祝福がもたらされる
故、祝え。今こそ大いなる《軽蔑の時》だ――――
―――《惟神》―――
《回帰する超越の時》』」
ゆらり。陽炎が立ち上る。
それはいつの間にか形を紡ぎあげ――――影でできた、漆黒の龍をつくり出す。
その龍は、奇妙な格好を取っていた。長い自らの尾を、その口にくわえて、咀嚼している。
――――自らの尾を食う龍。そんな名前が、シウネーの頭の中に蘇った。たしか、錬金術の象徴として扱われている存在。
同時に、過去へと、永遠の生へと回帰する証。錬金術師たちが目指した《不死》の、一種の象徴。
そして終わらない死は――――救世主の裁きが決して下らないことを示す。なぜならば、灰塵と化すことすらできないから。《蘇る》ことが通用しないから。
それは罰。それは罪。生き抜いた先にこそ祝福はあると唱える、西洋協会に対する侮辱。生きるだけで、死は訪れない。『生き抜く』ことが不可能ならば、祝福は絶対に与えられない――――
「『《神・哭・神・装》
―――《惟神》―――
《回帰する超越の時》』」
ユウキの体を闇の龍が、鎧のように覆っていく。それはエインヘルヤルとの戦いで見た。つまりそれは、ユウキに与えられた『新たな力』が、完全に解放された証――――
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