暁 〜小説投稿サイト〜
輪廻
第一章
[2/3]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
スターがいると思っていた。だがそうではなかった。
「いらっしゃいませ」
 店には何と目も眩むような美人がいた。優しげな顔立ちで黒くて長い髪を後ろで束ねている。エプロンを着ているがその上からでもわかる程のプロポーションのよさだ。胸がかなり大きいのだ。背も高い。
「えっ」
 隆一はその美人を見て目を丸くさせた。何でこの人がこの店にいるのかわからなかった。
「あの、すいません」
「はい」
 美人は彼に顔を向けてにこりと微笑んできた。
「ここ、マノンですね」
「はい、そうですよ」
 その微笑のまま彼に応えてきた。
「喫茶店の」
「はい、喫茶店マノンです」
「ですよね。あれっ?」
「おう、来たか」
 ここで店の奥からあのマスターの声がしてきた。そして今隆一の前にやって来た。
「早いな、感心感心」
「あら、兄さん」
「えっ、兄さんって?」
 隆一は美人の今の言葉に目を丸くさせた。
「あの、今何て」
「ああ、言ってなかったか」
 マスターはその言葉を聞いてその大きな口を開けて笑った。それからまた隆一に述べる。
「こいつな、俺の妹なんだ」
「妹さん、ですか」
「ああ、名前は百合子。大学生でな、こうして店も手伝っているんだ」
「はあ、そうだったんですか」
 全然聞いていなかった。まさかこんなむさくるしいマスターにここまで綺麗な妹がいるとは思わなかった。隆一は顎が外れそうな程呆然としていた。
「何とまあ」
「そんなに驚いているのか?」
「いえ、それはその」
 正直驚いている。それは隠せない。
「同じ親父とお袋だぜ」
「そうなんですか」
「それでもまあ。こんなに可愛くなっちまってよ」
「そんな、兄さんたら」
 百合子は兄の言葉に苦笑いを浮かべていた。そしてまた言う。
「そんなこと言って」
「ははは、まあそれでな」
 彼はさらに言葉を続ける。隆一に対して述べる。
「今日からこいつと仲良くやってくれよ。いいな」
「わかりました」
 隆一はその言葉に頷く。こうして彼は百合子と一緒に店のアルバイトをすることになったのであった。
 アルバイト自体は楽しかった。マスターも百合子も優しく隆一を教えてくれた。隆一は店の雰囲気も気に入り楽しくアルバイトをしていた。その中でも百合子に目を奪われがちになっていっていた。そのことをマスターにもからかわれた。
「おい」
 彼はニヤリと笑って隆一に声をかける。丁度閉店時間で店の中には二人しかいない。百合子はゴミの片付けを後ろでしている。
「何ですか?」
「楽しくやってるようだな」
「ええ、まあ」
 それに応えて頷く。後片付けはてきぱきとやっている。椅子を上げて掃除をする。まだ入って間もないというのにかなり手馴れた動きを見せている。
「どうだ?百合子は」
「え
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ