第六章
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第六章
「それまでね」
「そうね。お家までね」
「こうしていよう」
こう話してだった。二人は隆子の家まで向かった。暫く歩くとだった。赤い屋根の家が見えてきた。そこが隆子の家である。
その家の白い玄関まで来るとだ。隆子は琢磨に顔を向けてきた。そうしてそのうえで彼に対して言うのであった。
「ここまでね」
「うん」
「一緒に来てくれて有り難う」
こう礼を言うのだった。
「本当に」
「それはいいよ」
「いいの?」
「だってデートじゃない」
だからだという琢磨だった。
「だったら一緒にいるのはね」
「当たり前なのね」
「そう思うよ」
こう隆子に言った。
「それは違うかな」
「そうなるかしら」
「僕はそう思うよ。それじゃあ」
「待って」
手を離して自分の家に帰ろうとする彼をだ。無意識のうちに呼び止めた。
「今はね」
「今は?」
「デートだから」
またこのことを言う彼女だった。
「だからね」
「うん。何かな」
「最後に」
顔が自然と真っ赤になる。そうしてからの言葉だった。
「最後にね」
「何かあるの?」
「先生が言ってたけれど」
言葉を中々出せなくてだ。肝心なことを言う前にあれこれと言ってしまっていた。だがそれでも隆子はこの言葉を琢磨に言ったのだった。
「ほら、キスね」
「キス?」
「そう、キス」
言った。このことを。
「キスしない?それで」
「キスを」
「そう、デートって好きな人とするものだし」
「だからキスも」
「先生言ってたじゃない。好きな人同士がキスするって」
「うん、そうだったね」
このことは琢磨も聞いていた。だから頷くことができた。
「先生言ってたね」
「だからね。最後にね」
言葉が中々出ない。だがそれでも必死に言った。
「キス、しない?」
「キスをね」
「そう、キスね」
また言った隆子だった。
「今から」
「いいの?それ」
「いいわ」
こう琢磨に答えた。
「だからね。今からね」
「本当にいいんだよね」
琢磨は隆子に断った。
「それで」
「だから。いいわ」
そうだというのだった。
「御願いね」
「うん」
こうしてだった。二人は向かい合ってだ。少しずつ動こうとした。
隆子は目を閉じようとする。どうしてかわからないが目が潤んできているのがわかった。そうしてその中でだった。唇と唇がだ。
近付いてくる。その時にだ。
ぽつりとだ。雨が降ってきたのだった。
「えっ」
「雨?」
二人はそれで我に返ってだ。顔をあげた。すると雨が本当に降ってきていた。
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