暁 〜小説投稿サイト〜
ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第4話 士官学校 その2
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
た首を振り上げた。

 そこには随分と若作りな悪魔の尻尾を持つ要塞事務監が立っていた。

 相手は四年生。こちらは初年生。先任順序は軍隊の鉄則だ。俺達は疲れた身体を今一度椅子から立ち上がらせ敬礼する。キャゼルヌも面倒くさそうに答礼すると
「あれほど補給・補給言うからてっきり後方支援科だと思ったんだが、戦略研究科とは思わなかった。これでしばらく“ウィレム坊や”も大人しくなるだろう」
 あまりにも他人行儀な言い方なので、俺はカチンと来て言い返した。
「こういっては身も蓋もありませんが、彼の増長を押さえることが上級生の仕事では?」
「確かに身も蓋もない言い方だが、アイツはあれでちゃんと上級生に対しては礼節を保っている。目の前の誰かさんのような言葉遣いはしないのさ」
 と、怒らずそして悪びれず答えるものだから、結局俺もウィッティもお互いの顔を見合わせずにはいられなかった。

 この事件というか遭遇戦以降、キャゼルヌが卒業するまで俺達二人は彼の『暗黙の保護下』みたいな扱いを受ける羽目になる。しかも『あの』ホーランドを口で撃退したということで、それまでホーランドに遠慮していた戦略研究科『以外』の候補生が何かと気を遣ってくれるようになった。特に秀才揃いで男性比率の高い戦略研究科ではなく、女性比率のかなり高い情報分析科や半々の後方支援科などからお誘いがくるものだから、俺達二人の戦略研究科での立場がたいへんいろいろな意味で『微妙』になってしまった。

 もっとも前世日本でモテ期のなかった俺としては、たちまち女性との付き合い方に不慣れな面を露呈してしまい、『なんていうか、顔も性格も家柄も悪くないんだけど恋人にするにはちょっと』みたいな扱いになってしまった。むしろそういう面ではウィッティが調子に乗っていたと思う。

 そしてホーランドなどは『あいつ等は口先だけの軟弱者だ。実戦になれば後方支援ぐらいしか役に立たない』などと陰口をたたいているらしい。お陰で直上の二年生からは圧力を伴った視線を感じる事がしばしばだ。だが『保護者が将官だから贔屓されている』と言わないところは、さすがにエリート連中だと思ったが。

 ともかく暗黙の保護下で、俺はウィッティとそれなりに努力し、二年進級時には戦略研究科内でも上位の成績を収めることが出来た。同科上級生からのストレスを、上手い具合に発散できたと思う。
 正直言えば、自分が銀河英雄伝説の世界にいることを満喫していたのかもしれない。体力はホーランドのイジメ寸前とも言うべき『追加』訓練でゆっくりとではあったが充実していったし、あの魔術師がいやがっていた「戦闘艇操縦実技」や「射撃実技」も、前世では経験できなかったことだったから興味を持って取り組めた。「戦史」「戦略論概説」「戦術分析演習」もそれなりにというか、ぶっちゃけ『
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ