第三章
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第三章
「だからね」
「それで僕を恋人に?」
「うん、駄目かな」
あらためて彼に問う。
「それって」
「駄目って言われても」
「私のこと嫌い?」
こう彼に問うた。
「だったらいいけれど」
「嫌いじゃないよ」
琢磨はそれは否定した。実際に彼女のことを嫌いではなかった。
「別に。隆子ちゃんのことは」
「じゃあいいわよね」
その言葉を聞いてだ。隆子は頷いたのだった。
「私とね。恋人にね」
「うん、それじゃあ」
「宜しくね」
こうして恋人同士になるのだった。そしてだ。
学校の授業の最後のホームルームが終わるとだった。隆子は琢磨のその席のところに来てだ。そうしてそのうえで声をかけるのだった。
「ねえ」
「何?」
「一緒に帰ろう」
こう彼に声をかけたのである。
「今からね」
「何で一緒になの?」
「だって私達恋人同士じゃない」
だからだというのであった。
「だからよ。デートよ」
「デートなんだ」
「恋人同士だからね」
それだからだと話す隆子だった。
「恋人同士って一緒にデートするものって聞いてたから」
「それでなんだ」
「うん、だからね」
「一緒に帰るんだ」
「デートしよう」
それをデートと言う隆子だった。
「そうしよう」
「うん、わかったよ」
琢磨もそれで頷いた。そうしてだった。
この日二人一緒に下校した。そこでだ。隆子が彼に声をかけてきたのだ。
「ねえ」
「うん、どうかしたの?」
「今私達デートしてるけれど」
彼女はここでもこのことを話した。
「それでね」
「何かあるの?」
「デートって」
こう言ってからだった。
「こうして一緒に歩くだけじゃなくてね」
「まだ他にあるの?」
「手をね」
こう琢磨に言うのである。
「手を握ったりするものなのよ」
「手を?」
「そう、手をね」
自分の方に顔を向ける琢磨のその顔を見ての言葉だった。周りはいつも通る住宅街だがそれは今は目には入っていなかった。
「握ったりするのよ」
「そうだったんだ」
「うん、私聞いたの」
こう彼に話す。
「だからね」
「そういうのだったら」
「手を握ってくれる?」
琢磨の顔を見て尋ねる。
「私の手。駄目?」
「うん、いいよ」
従順な琢磨はすぐにその言葉に答えた。
「それじゃあね」
「有り難う。じゃあ」
「うん」
隆子が差し出したその手を握り返す琢磨だった。手と手が触れ合うと温かった。その温かさを感じなががらだった。
琢磨と隆子は二人並んでだ。そうして歩きはじめた。そこでまただった。
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