下忍編
親心
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いきなり、君麻呂が病に体をおかされた。
ごほごほと何度も咳き込み、そして彼の口から零れた赤い血を、再不斬は忘れられない。
何度も見慣れていた筈なのに、何度も見続けたはずなのに、なのに、君麻呂からこぼれ出たというだけでそれは恐怖の対象となった。
その時、再不斬は、ほぼ初めて、他人が理由で恐怖を抱いた。
白が、君麻呂が死ぬときがないと、再不斬はそう言う風に感じていた。自分が死にかけても、白が死にかけても、君麻呂が死にかけても、でも死ぬわけがないのだと、どれだけ死にかけても結局は生き残るだと、確信がない、ただの希望的観測が再不斬の心を支配していたのだ。
なのに、それは、君麻呂という儚き存在が気圧された病によって、いかに儚く脆い物かを知らされ、再不斬は二人の死を少しばかり恐れ、そして失うことを恐怖する自分に気が付いた。
なんてことだと、弱くなった自分に驚愕し、二人の死を恐れる自分を嫌悪し、それでも二人のことは嫌えなかった。
そして、君麻呂を失わないようにと、依頼を受けた。
君麻呂の体を治すには、多額の医療費と腕のいい医者が必要だった。
だからこそ、この依頼を受けたというのに、それがこんな形で叶うとは思わなかったと、再不斬は目の前のこどもを見つめた。
背格好からして、年齢は白と同じくらいだろう。意思の強さを象徴する、赤い瞳を光らせたカトナは、再不斬の体にある火傷の痕を治療しつつ、微笑む。
「…ちゃんと言葉にしないと、伝わらないよ?」
その言葉にしらをきり、なんのことだと言うことは容易いが、再不斬はなにも言わずに、黙ってカトナを見つめた。カトナはその視線に何も返さず、
しばらくの間、迷った様子を見せた後、再不斬は声を絞り出した。
「……今更、言える立場じゃねぇよ」
人を殺した再不斬が、今更、誰かを好きになったところで、その気持ちは汚れてしまっているし、第一、そうやって好意をまっすぐに伝えることは、大人になってしまった再不斬には、とても難しい。
好意なんて、そんな綺麗な感情を剥き出しのまま伝えれるような、真っ直ぐさは持ちあわせていない。有るのは精々、人をいかに早く殺すかの技術だ。
再不斬の手は汚れてしまっていて、本当は二人に触ることさえ耐えがたい。傷つけてしまいそうで、扱いにくい。
「…それだけ、大切なんだ」
「そんなんじゃねぇ。てめぇの予想とはちげぇよ」
そういって否定するくせに、再不斬が二人を見つめる目はとても優しくて、抱く感情は柔らかくて。
それはきっと、親が子に抱くものととても似ていた。
理由はなく、感情が心に溢れ、思いが体中を見たし、なんの代価も代償もないのに、溢れるそれは愛情によく似ていたけれど、そんなものを受け取ったことが無い再不斬は、何も知らな
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