第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第一節 追撃 第五話 (通算第65話)
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
るが、上官に対して反抗的であり、ジャマイカンが最も手を焼いている。
「黙らんかっ!……ジェリド中尉、今回の出撃は貴様に汚名返上の機会を与えやろうというのに、何だその態度は。本来なら始末書提出の上、減棒ものだぞ!」
いきり立ったジェリドをジャマイカンが一喝しする。恩着せがましい言い方であったが、不始末を不問に付したのはジャマイカンであるため、引き下がざるを得なかった。引っ込むにしても悪態を吐くのを忘れないのがジェリドである。カクリコンは戦闘した上で機体を強奪されたが、ジェリドは被弾もせず墜落して庁舎を破壊した上に強奪されているため、本来ならば降格されてもおかしくない。
「この作戦は交渉だ。白旗を掲げて敵艦に赴いてもらう。バスク大佐からの親書を渡し、即答をもらって帰投せよ。フランクリン技術大尉には、艦橋にて敵の新型MSを観察してもらいたい。」
一同を見渡す。もし本当にそれだけならば三機も発進する必要はない。訝しがる空気を無視して、ジャマイカンは口を接いだ。
「エマ中尉は白旗を携行し、《ガンダムマークU》で出撃」
「はっ」
ジェリドとカクリコンが顔を見合わせる。
不名誉な墜落と強奪の汚名――二人は共に脛に傷のある身とは言え、三人は同階級であり、先任士官であるカクリコンが、筆頭の扱いを受けている。そのカクリコンを差し置いての抜擢だ。妬みなどではなく、純粋に驚いた。
「ジェリド中尉は《クゥエル》でエマ機を護衛、指定のポイントにて命令書を開け。此方から攻撃を仕掛けるなよ」
「はっ」
蜜蝋で封をされた正式な命令書だ。指名命令書を授かることは同格のパイロットより箔がつくことを意味する。
「カクリコン中尉はエマ機に同行し、艦外から機体に近づく者がいたら排除せよ」
無邪気に喜ぶジェリドを横目に、気の乗らないカクリコンは挙手をした。
「少佐、質問があるんだが…?」
ジャマイカンからすれば格下の士官にタメ口を利かれたことになる。だが、パイロットというのは、すべからくこうであった。こう言う口の利き方を許されていると言ってもいい。それは船乗りと航空機のパイロットの関係に酷似していた。
「何だ?」
「本当に《ガンダム》の奪還が目的なのか?」
カクリコンの口調には不信感が漂っていた。パイロットは命を張って最前線に赴くが故に駒として扱われるのを嫌う。カクリコンはジャマイカンからその手の匂いを嗅ぎ付けていた。
「当然だ。そのための交渉にエマ中尉を遣るのだぞ?」
「……ならいい」
カクリコンはそれきり一言も言わずブリーフィングルームを後にした。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ