第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第一節 追撃 第四話 (通算第64話)
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「〈ルナツー〉からの増援はどうなっている」
艦橋を離れ、司令室に収まったバスクは、豪奢な椅子にドカッと腰を降ろした。旗艦には艦長室のほかに司令室、来賓室が備え付けられており、司令室と来賓室は特に豪奢な造りになっていた。これはハールツが気を利かせたとか便宜を図ってという類いのものではない。元々アレキサンドリア級はティターンズ各部隊の旗艦となるべく、特に旗艦機能を充実させた設計をなされている。現在はティターンズの専用艦だが、今後マゼラン級に代わって連邦宇宙軍の艦隊中枢を担う艦となる計画であった。その上でティターンズ総旗艦の建造計画が進んでいる。
艦橋の居心地の悪さは、予測したこととは言え、気分がいい訳はない。バスクにせよ、ジャマイカンにせよ、海軍上がりとのソリが合わないことは理解している。その上で使いこなさなければならないことも承知の上だ。だが、同時に抜本的な組織改革が必要だと感じていた。そのためにも、戦功を重ねなければならなかった。こんなことで躓くことは許されない。
「〈ルナツー〉からは既に《ボスニア》がでております」
ジャマイカンは、バスクが戦後にジャミトフ・ハイマンの手先となって以来、組んできた腹心である。作戦参謀としてバスクを支えてきた。そういう気安さがないではないが、やはり気が置けない程ではない。基本的に人を信用していないのだ。
「サラミス一隻か…」
「《ボスニア》には、あのライラ・ミラ・ライラが居りますから二隻分以上の働きはするでしょう」
バスクはたかがMSとは侮る指揮官ではない。MSの恐ろしさは一週間戦争で思い知らされた。だが、一機のMSが戦局全体に及ぼす影響などたかが知れてもいる。戦争は数の原理なのだ。MSには戦局を変える機を作ることは出来ても、それを利用し戦局自体を左右するのは人――指揮官の采配である。
正直、一隻でも一機でも多く戦力が欲しかった。バスクとしては一個機動戦隊規模の増援が欲しい。だが、一個機動戦隊の派兵ともなれば、正規軍である〈ルナツー〉艦隊からでは准将クラスを派遣せざるを得ない。そうなればバスクが遣りにくかろうというベーダーの配慮と判るだけに、バスクは《ボスニア》に期待するしかなかった。司令権限で《ボスニア》をティターンズに接収してもベーダーは何も言っては来ない――ふふっと小さく笑った後、豪快な笑い声を響かせた。
バスクは愉快だった。ダグラスが送り込んできた《ボスニア》に所属する機動歩兵小隊は、〈ルナツー〉でも札付きの戦争屋と渾名される血の気の多い連中である。戦争ができるとなれば、扱いにくいと噂される《ボスニア》の艦長チャン・ヤー大佐なら、バスクに恩義を感じずとも指示には従うだろう。そうすれば、何かと反抗的なハールツ・マクフライもチャン・ヤーの手前、言うことを聞かざるを得なくなるという寸法だ。
「
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