第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第一節 追撃 第四話 (通算第64話)
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さすがは《闘将》だな」
そこまでダグラス・ベーダーが考えていた訳ではない。だが、バスクなら良いように使うだろうくらいは思っていたかも知れない。論理的な思考より直感と感情で行動して成功した稀有な人物かも知れない。
一方、ジャマイカンはバスクの真意を図りかねていた。ダグラス・ベーダーは今年にも引退するであろうと言われている陸軍系最大派閥の領袖である。普通なら、無難に日和見を決め込んでティターンズとエゥーゴを両天秤にし、政治家に転身しても不思議ではない。バスクは、それをせず、己の信念に生きるダグラス・ベーダーが、一年戦争の最終戦を引き起こした《闘将》らしいと言っている訳ではなさそうだ。
――プーッ。
不意に内線が鳴った。
バスクが顎をしゃくり、ジャマイカンが出る。伸びたケーブルを煩わし気に左手で払いつつ、その表情が見る間に変わった。
――報告します。発、第三七五○機動歩兵小隊ミンツ中尉。宛、バスク司令。敵母艦と思われる所属不明艦およびサラミス級二隻を発見。
「敵艦は三隻だと?」
先遣隊は強かに逆撃を被り、一機を残して全滅。敵機は八ないし九機以上いると予測された。
「やはり居たか……」
バスクが独白する。今のところ、虚を突かれてはいるが、敵はバスクの想像の範囲を越えていない。つまりは〈グリプス〉潜入が陽動で《ガンダム》強奪が目的だったということだ。
「舐めた真似をしてくれた礼はたっぷりとさせてもらうぞ」
追撃に向かわせたのはサイド7駐留軍とそこから転籍したティターンズの港湾警備隊である。《ジムU》四機と《クゥエル》四機の二個機動歩兵小隊の損失は痛かったが、その分を《ボスニア》で補填するとして時間を稼ぐ必要がある。
「ジェリド、カクリコン、エマを集めろ」
「はっ、ブリーフィングルームに召集させます」
バスクが人の悪い笑みを浮かべる。
勝つことに終始し、如何に勝つかなどという美学とは掛け離れたところにバスクは立っていた。ジャミトフの懐刀と言われながら、将官への昇進が見送られているのはその辺りの機微が欠けているからなのだろう。
「では例の作戦で…」
「技術屋も時間稼ぎぐらいにはなるだろう…ブレックスが居れば餌には食いつかないかも知れんがな」
軍の公式記録ではこの時点でブレックスはグラナダ管轄のスタンフォード・トラス型島1号コロニー〈スウィートウォーター〉にいることになっていた。
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