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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第四章 エマ・シーン
第一節 追撃 第三話 (通算63話)
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らジャミトフ・ハイマンはバスクをそれ以上に昇進させようとはしなかった。
「バスク司令…よろしいか?」
 大佐が戦隊を預かる場合、司令官代理とは言わず、単に司令と呼ぶ。司令官とは将官以上の呼称であり、代理を強調した言い方だ。加えてタメ口はハールツの精一杯の嫌味である。バスクは真意を知りつつ、鼻哂してジャマイカンに向かって頷いた。
「艦長の宜しいように」
 バスクとしては度量を示したつもりだが、ハールツにしてみれば同格のバスクからならともかく、格下のジャマイカンに命令されたような形に思わずむっとした。が、ぐっとこらえ、副長に目配りする。キーヴァ副長が復唱し、スライドス航宙長が機関室に伝達した。
「出港位置固定、機関出力八十パーセントへ。出港後、ただちに戦闘ブリッジ開けっ、総員第一種戦闘配備っ。機関臨界後、第一戦速へっ」
 矢継ぎ早に指示を出す。それがハールツの遣り方だ。『餅は餅屋だ。タイミングは専門家に委ねる』とは、副長時代に搭乗したサラミス級の艦長の口癖だった。
「では、艦長任せる」
 おもむろに立ち上がり、バスクが司令席を降りる。ブリッジクルーに安堵の空気が流れた。艦長と事実上の司令官のソリが合わないのはかなりなストレスを与える。艦長は艦の総責任者であり、クルーには一艦一家主義の海軍気質が染み付いている。ハールツが艦長を務めた艦は全地球圏特別強襲警備隊(All Earth Guardian Incusion Specialized)時代から、一定の戦果を挙げつつ、激務ながら最も戦死者の少ない艦だったこともあり、かなりの尊敬を集めている。ペガサス級機動母艦《セントゥール》から《アレキサンドリア》に移るにあたって部下を引き連れて移艦したことは乗組員にとっても誇りとなっていた。
「アレキサンドリア、発進」
「発進」
 ガイドビーコンが示す虚空の航路を、《アレキサンドリア》は緩やかに合流宙域へと向かった。
 潜入した三機のMSの追撃と奪われた二機の《ガンダム》の奪還に一個戦隊規模の動員は大仰に過ぎるという雰囲気が《アレキサンドリア》にはあった。だが、バスクには敵――エゥーゴが機動歩兵小隊のみで突入をさせるとは思えなかった。嫌ってはいるがブレックスは航宙戦の大家である。数少ない空軍閥出身で准将とはいえ将官であることを鑑みれば、そんな愚行をする筈もない。
「母艦が何処かにいるはずだ」
 それを探して叩く。そのためには独立機動戦隊規模では足りない。MSも艦も多ければ多いに越したことがなかった。
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