第3話 士官学校
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七六五年法務研究科入学席次三三番/四四七七名中の叔母のありがたいお言葉である。……宇宙船暮らしでろくに勉強してなさそうな魔術師の脳みその良さを思い知らされた気がする。
ともかく俺は士官学校の初年生として、実家と大して距離の離れていないテルヌーゼン市で集団生活を送っており……
「貴様ら、よくその程度の知力と体力でこの栄えある自由惑星同盟軍士官学校におめおめ来れたものだな。もう一度鍛えなおしてやる。グランドをあと一〇周。俺に続け!!」
そういって再び走り出す、少し伸ばせばなかなかに見ごたえがあろう金髪をきっちり角刈りした、胸筋ムキムキランニングな二年生に付いていくこと三〇分。もはや一人で立つことすらできない俺達初年生は、同室の仲間と互いに肩を貸し、足を引きずりながら部屋へと戻っていく。
「ランニングとはいえ、さすがに“ウィレム坊や”が出てくるとキツいな、ヴィク」
俺と肩を組んだまま、二段ベッドの下へ仰向けで倒れこんだ同室の戦友(バディ)は、荒い息遣いで目を閉じて言った。俺も今は『あぁ』としか答えられない。
だいたいあの“ウィレム坊や”の存在は異常だ。現役合格で士官学校の二年生なのだから、数え年一六歳の俺達より一つ年上なだけなのに、体つきは二〇過ぎのレスラーと言っても過言ではない。それでもただの脳筋であればまだ可愛げがあるに、学年主席だという。そして当然のように戦略研究科に所属しているから、直下の学年である俺達は徹底的にしごかれる。三年四年の上級生も、戦術シミュレーションや射撃実技等で後れを取っているせいか、形式なりとも“ウィレム坊や”が敬意をもって接している以上、あまり口を挟んでこない。第三次ティアマト星域会戦で、自分の年齢以上の軍歴を持つビュコック提督にああも慇懃無礼な態度が取れるというのも、士官学校におけるこういう経験が原因なんじゃないだろうか。なお最上級生は現在絶賛訓練航海中で不在。帰還は三か月後。それまでは“ウィレム坊や”の天下だろう。
「ところでヴィク、今、何時だ」
「一八三七時だ。フョードル=ウィッティ候補生殿。飯に行くなら一人で行け。ついでに哀れな同室戦友に冷たい経口補給水を持ってきてくれると感謝してやる」
「ヴィクが俺に感謝してくれたことなんかあったか?」
「口に出した記憶はないが、心の内では毎日感謝している」
「あほぬかせ」
同室戦友のフョードルの悪態を聞き流しつつ、ようやく息が整った俺はベッドの端に半身を起こし、大きく息を吐いた。士官学校に入学して数日のうちに、同室戦友となった彼ウィッティは、原作ではクブルスリー本部長の高級副官でクーデターの最初の一撃であるアンドリュー=フォークの狙撃事件を未然に防げなかった奴だ。入学早々、特徴的な髪型をした原作登場人物に出会って俺は驚いたものだが
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