Episode30:正義の味方
[9/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
った? 正義の味方…? そんなもの、いるはずがないのに……」
そもそも、絶対的悪のいないこの世界において、正義の定義なんてない。なにかを守ろうとするなら、他のなにかを犠牲にしなくてはならない世界で、正義の味方が成立するはずもない。
正義の味方とはつまりは全てを救い、導く者のこと。誰一人の取り零しもなく、全てを救い続けるもの。
けど、そんなことは不可能だ。より多くを救おうともがけばもがく程、取り零してしまう者も多くなる。
だから、真の正義の味方は存在しない。
忘れるな、大を救うには小を切り捨てなければならない。取り零される者は必ず存在する。それこそが、今まで俺が殺してきた人達であり、これから殺して行く人達だ。
忘れるな、正義の味方はいない。故に俺はそんな存在になることはできない。
忘れろ、正義の味方に憧れたあの時の感情を。
「俺は……暗殺者だ…」
☆★☆★
「俺は……暗殺者だ…」
聞こえてきた苦しそうな声に、目が覚める。
いつか聞いたことのあるような、精一杯絞り出したかのような、酷く頼りない声。
見上げた先の暗闇の中に、かつて囚われていた私を守ってくれた『正義の味方』を幻視した。
「……おにぃ…?」
私の呟きに、彼はこちらを見て笑みを浮かべた。
「ごめんね、起こしちゃった」
そう言う彼からは、既に彼の面影はなくなっていた。
☆★☆★
どうやらエリナを起こしてしまったみたいだ。寝惚け眼を擦るエリナに謝罪して、笑みを浮かべる。
「寝ちゃっててごめんねエリナ。困ったでしょ?」
「あ、いえ、問題ないですよ。私も眠かったんで」
勿論それは俺を気遣って言ってくれたのだろう。そんな彼女の心遣いに感謝しながら、寝癖だった髪の毛を撫で付ける。
「うん、ちょうど森崎君もいないし、成果を聞こうか。大丈夫?」
「はい、大丈夫です。日本にいる無頭竜の中で、九校戦にちょっかいを出してきそうなとこのアジトですよね?」
そう、俺がエリナに依頼したのは、今回の九校戦に対して害を為すであろう無頭竜のアジトに位置。
九校戦が富士演習場で行われるのだから、そう遠くない所にアジトがあるところまでは予測できたのだけど、九十九の人脈だけではその特定まではできなかった。流石に、無頭竜のような犯罪組織ともなると情報の隠蔽が上手い。
「結果的に言って、恐らく無頭竜の東日本支部であるとみて間違いないと思います」
「東日本…ということは西日本支部みたいのもあるのか」
「そうですね。今確認できているのは東と西の二つです」
移動中にあったトラック事故の首謀者が無頭竜だったことや、これまでの調べで無頭
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ