Episode30:正義の味方
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測は、穴だらけの推測とも言えない妄想だ。
「……だとしたら、俺には分からないことが多すぎる…」
ズキリ、頭の奥ーー脳が少しの痛みを訴えてきた。少し柄にもなく考え過ぎたらしい。今日はなんか疲れた。もう寝よう。
「おやすみなさい」
森崎君に悪いと思いながら、俺は部屋の電気を消して眠りにつくのだった。
☆★☆★
不気味な夢を見た。幼い子供達が、牢屋の中で監禁されている夢だ。
恐らく、各地から攫われてきたのだろう。白人黒人黄色人、様々な肌の色を持つ子供達たちや、更にはまだ3歳にも満たないような子供もいる。牢屋の外には、三人の大人の姿。二人の男女は揃って青い髪をしているが、もう一人の男は燃え盛る炎のように真っ赤な髪をしていた。なにやら揉めているようだが、その内容を聞き取ることはできない。
しばらくして、青い髪を持つ二人の男女がどこかへ行った。それを見届けて、赤い男がこちらへ歩いて来る。牢屋の中の子供達が、表情を強張らせ、震え出す。
『守らなきゃ』と思った。かつて憧れ、今でもなりたいと願っている正義の味方のように、子供達を守らなくてはと思った。
口元に隠しきれない狂気の笑みを浮かべた男の手が、俺に向かって伸びてきてーーーー
「ーーーッ!?」
ガバリ、と思い切り起き上がる。目が覚めた時、そこは牢屋の中ではなくホテルの一室であった。
「あれは…一体……」
収まらない動悸に、溢れ出た冷や汗。とにかく、夢のことを考えるのは後だ。今は、少しでも落ち着く努力をしよう。
暗くなった部屋の虚空を眺めていると、少し楽になった気がした。心に余裕ができて、周りを見る。
森崎くんはまだ帰ってきていなかった。この時間まで帰ってきてないんだ。恐らく、どこか別の部屋で寝たのだろう。なんかハブられた気がしなくもないけど、さ、寂しくなんてないんだからねっ。
「やめよう、虚しくなってきた」
苦笑いして、ふと自分の右手がなにか温かいものに包まれている感覚を覚えた。
疑問に思い、そちらを見ると。
「エリナ…」
そこには、椅子に座って俺の太腿を枕にして寝息をたてるエリナの姿があった。
そういえば、エリナが集めた情報を聞くために夜部屋に来るように言ったんだった。すっかり忘れていた。
「悪いことしちゃったな…ごめんね、エリナ」
気持ち良さそうに眠るエリナの緑がかった銀髪をゆっくりと撫でる。それにしても、エリナに手を握られてるから汗を流しに行けないなぁ。まあ、いいか。
「……なんだったろうな、あれは」
唐突に見た、覚えのない夢。心当たりなんてまるでなかったけど、ただの夢だと割り切るには現実味があり過ぎた。
「牢獄、子供達、三人の大人……そして俺はなにを思
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