Episode30:正義の味方
[6/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
顔で隼人の隣を歩く鈴音だが、やはり五時間ずっと作戦を練り続けていたのだから少しだけ疲労の色が窺えた。
途中途中で、真由美と摩利の競技を中継で見たりなど息抜きも入れたが、やはり五時間は長かった。
この時ばかりは、なんでもできる自分の能力を恨む隼人であった。
「……スピード・シューティングは男女ともウチが優勝して、バトル・ボードの方も委員長と服部先輩が準決勝進出。中々いい滑り出しですね」
「そうですね。あまり計算に狂いがないのが助かります」
結局、女子スピード・シューティングはそのまま真由美が他を圧倒し堂々優勝。男子も所々危うい所もあったが優勝を果たし、女子バトル・ボードの摩利も危なげなく三日目の決勝に進出を決めた。
「……ちなみに、俺の計算って…?」
「勿論、優勝です」
ズン、と隼人にプレッシャーがのしかかる。若干青褪めた顔を見て、鈴音は小さく笑みを漏らした。
「冗談ですよ」
「じょ、冗談…?」
半信半疑になりながら聞いてくる隼人に鈴音は頷く。それを見てあからさまに安堵した顔をする隼人。
「けど、期待しているのは本当です。頑張ってくださいね」
「……まあ、先輩が考えてくれた作戦で負けるわけにはいきませんからね。やるだけやりますよ」
隼人と鈴音が五時間かけて考えた作戦は、鈴音曰く「作戦と呼ぶには余りに稚拙」だと言う。しかし、鈴音が貴重な時間を大幅に割いてまで考えてくれたのだ、それを無駄にするわけにはいかないと、隼人は気合を入れ直した。
「……ん? あれは…」
そこで、隼人は前方に誰かがいるのに気がついた。
自分よりも高い身長に、色素が抜け落ちた白い髪、そして身に纏う濃密な殺気。どうやら今はそれを抑え目にしているらしいが、これまでそういった気配の察知能力を養っておいた隼人には無意味だった。
まるで気そのものが質量を持っているかのように重く、そして鋭い。
「紫道、聖一」
「九十九、隼人か。それと…一花…いや、今は市原鈴音、か…クク、珍妙な組み合わせ、だな」
「なに…? どういう意味だ」
知らず、隼人の体は臨戦態勢に入っていた。腰を落とし、すぐにでもあの首を砕き折る準備をする。
「…いや、なに。研究者と実験体が、揃っているのが愉快、でな」
「っ!」
「おっ、と」
攻撃を仕掛けたのは、隼人ではなかった。汎用型CADを構えているのは鈴音。その顔は、珍しく薄い怒りを浮かべていた。
「クク…知られたくない、か? まあ、いいさ。いずれ、誰もがアレを知る、ことになる。楽しみにして、おくんだな」
「……」
鈴音はなにも言わない。ただ、引き結んだ唇が、少し震えていた。
「…お前がなにを言っているのかは知らないけど、これ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ