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魔法科高校の神童生
Episode30:正義の味方
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「あ、市原先輩に呼ばれてきたんですけど…見当たらなくて」

隼人に声をかけたのは、作戦班に属する二年生の男子生徒。交友が深いわけではないが、それなりに言葉は交わしたことのある人だった。

「ああ、市原先輩なら奥の部屋で作戦を立ててるぜ。まあ、作戦って言ってもこれからの勝敗を予想してどの程度で優勝できるか、って計算だけどな」

「へぇ…そんなこともしてるんですね。ありがとうございました、先輩」

「おう、なんかあったらまた言ってくれ」

気さくに手を振る先輩に手を振りかえしながら、隼人は鈴音がいるらしい奥の部屋へと向かった。


「市原せんぱーい…九十九です」

『ああ、どうぞ。開いてますので』

向こうから聞こえてきた声に、ほっと胸を撫で下ろす。もし鈴音ではなく他の誰かがいたら恥をかくことになっていたのだ。よかった、と隼人は息を吐き出した。


鈴音のいる部屋に入ってみると、そこは情報端末やホログラム、モニターなどで埋め尽くされていた。
その中で、鈴音は一人モニターに向かってキーボードを叩いている。
取り敢えず、すごく集中していたため、隼人は邪魔しないように部屋の隅に置いてあった椅子に腰を降ろす。
そして、待つこと数分。カタリ、と恐らく最後のキーを打ち終えて、鈴音が溜息を漏らした。

「お疲れ様です、市原先輩」

と、そこに隼人がコーヒーの入ったカップを差し出した。座って待っているだけでは手持ち無沙汰だったのだ。

「ああ、ありがとうございます」

隼人からカップを受け取った鈴音はそれを一口飲んで机の上に置いた。

「さて…確か、アイス・ピラーズ・ブレイクの作戦を考えるのですよね?」

「はい。俺って対人戦は得意なんですけど、棒倒しみたいな遠距離魔法+駆け引きの競技種目は初めてで…」

今回の九校戦で、隼人が出場する種目は5日目、6日目のアイス・ピラーズ・ブレイクと、7日目、8日目のモノリス・コードの二種目。四日間連続という過密スケジュールだが、隼人本人が快諾したため鈴音を始めとした作戦班や真由美たちは、この無理矢理な予定を組むことができた。
その対価として、隼人は鈴音にアイス・ピラーズ・ブレイクの作戦案を一緒に考えることを約束させていたのだ。

「そうですね…まず、九十九さんの得意とする魔法系統を教えてください」

「得意とする…うーん、大体なんでもできるんですけど…領域魔法とか気持ちいいですよね。あの、無双感というかなんというか!」

とは言いつつ、隼人は滅多なことがない限りは領域魔法などという大規模な魔法は発動させない。
隼人が魔法を発動させるためには、『座標』『威力』『種類』を想像しなければならない。勿論、想像するだけであとは任意に魔法行使ができるのだから
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