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ノヴァの箱舟―The Ark of Nova―
#12『セカンドリベリオン』:1
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される。彼をそんな可哀そうな状態に変えてしまったのが、もう一人の方。

 その男は、地面に胡坐をかいて、分厚い本を片手にけらけら笑っていた。

 壮年、とは言わないが、くたびれた様子の男。比較的若いメンバーが多い《教会》上層部では、異例の風貌だ。癖のある、白髪が混じり始めた黒髪に、恐らく何日も剃っていないのだろう無精ひげ。赤みがかった瞳をもつ切れ長の目は、銀色のフレームの眼鏡に隠されており、その本性を覆い隠している。

 纏っているのは黒いコートと儀礼帽。どちらも、《七星司祭(ガァト)》の一員であることを示す服装だ。

「あー!おじちゃーん!」
「おぅ、誰かと思ったらコーリングの坊主じゃないか!久しぶりだな。またでっかくなったんじゃないか?」

 コーリングがうれしそうに声をかけると、男は破顔して片手を上げた。

「チャイネイも久しぶりだな」
「お久しぶりです。イーファイ様……何カ月ぶりでしょうか」
「あー……確か最後にお前を見たのは二ヶ月前だな」

 再びけらけらと無責任そうに笑うその男の名は、イーファイ・グースワット。《七星司祭(ガァト)》最高齢の41歳でありながら、恐らく純粋な戦闘能力では《教会》最強の男。

 本職は《職業軍人考古学者》。それは彼がかつて、崩壊した地上を探索し、遺産(オーパーツ)を回収する、この世で最も危険な仕事、《探索者(シーカー)》の職に就いていたことの証明。ありとあらゆる状況に対応するための戦闘能力と知識を保有し、さらにはその《刻印》、《獅子》がそれを強力に後押しする。

 《七星司祭(ガァト)》にすら与えられることは珍しい《禁書》のうちの一冊、《獅子心剣(レオンハルト)/(レプリカ)》を保有しており、その力を完全に開放すれば、《王都》を単身で沈めることすら可能になるという、まさに規格外の化け物。

 ただし彼本人は自身を「無害なおっさん」と称するおちゃらけた人物であり、性格面では好感が持てるのだが……

「……クーレッド、大丈夫か?」
「大丈夫なわけがないでしょうチャイネイさん……ボクはもう眠くて眠くてしょうがない……ああ、早く帰ってナタリアに膝枕してもらいたい……」

 糸が切れたのか、いかにも眠りそうな調子で答えるクーレッド。ちなみにナタリアとは彼の恋人の名前で、クーレッドが常に巻いているマフラーも彼女の手によるものだそうだ。

「ん?何だ、休みが欲しかったのか?じゃぁ一週間ぐらい休暇やろうか?」
「……本当ですか?……その間きちんと仕事するんですか?」
「いや、しない!監視の目が緩んだぜヒャッハーとばかりに大図書館に籠る!だから帰ってきたら仕事の量は二倍増しだぜ!」
「この外道ォォォォォォッ!!」

 そう、イーファイは大の仕事嫌い。書
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