運命の決着編
第124話 “ビートライダーズ” B
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ペコはチャッキーと肯き合うと、診察室のデスクからくねて来たロックシードを開錠した。
――凌馬が一度、手術用具を取りに行くために診察室を外した時、ペコは有事に役に立つ物がないか、室内を物色したのだ。手癖が悪い自覚はあったが、あの状況で何もせず座っていられなかった。
ペコは、チャッキーは、アーマードライダーではない。ビートライダーズだ。だからこそ彼らは思いついた、否、思い出した。ロックシードは変身用だけの道具ではない。インベスを召喚するための道具でもあったことを。
自分たちにも、戦う力があることを。
クラックが開く。だが、それはいつものものとは異なり、チャックが見えないほどに黒煙を放っていた。
ずるり。ずるり。ずどん!
インベスが落ちてきた。
天井よりも高いであろう巨体。脚は枯れ木の根、背中はハリネズミ、頭部は剣山。肩は大きな貝殻らしき物で覆われ、手だけが細すぎる骨。
最近、修羅場慣れしてきたチャッキーが、ペコの後ろに隠れるほどに、おぞましいインベスだった。
「なるほど。そういえばこいつでインベスを呼び出したことはなかったっけ。なかなか斬新なデザインだ。あえて名を付けるとしたら、そうだな……ヨモツヘグリに因んで、イザナミインベス、かな」
こんな時まで呑気な凌馬だが、今はその呑気さこそがペコたちに活路を開く。ここでこの男に変身されたら、脱走どころではない。
「舞は返してもらうんだから!」
チャッキーが診察台まで行って、舞の上体を起こして抱き締める。ペコはロックシードを握り、イザナミインベスに、彼女たちを肩に乗せるように命令した。イザナミインベスはその通りにした。
「いいのかい? 黄金の果実はまだ舞君の中だ。摘出できるのは私だけ。放っておいたら彼女はバケモノになってしまうよ」
「それでも、あんたみたいな奴に任せるよりマシだ!」
「コドモだからって、そのくらいの判断ができないなんて思わないで!」
ペコもまたイザナミインベスの背中のトゲを足掛かりに、肩当ての貝殻に乗った。
「ここから逃げろ!」
イザナミインベスが手近な壁を、剣山の頭部で頭突きした。壁に穴が開いた。
イザナミインベスは、ペコたちを乗せて壁の穴から外へと進み始めた。篠突く雨の、人のいない街を。
チャッキーたちはどうにか無事に舞をガレージに連れ帰ることに成功した。
ペコがヨモツヘグリロックシードを開錠し、施錠すると、イザナミインベスは黒い煙を拭き出すクラックへと入って行って、消えた。
「はぁ〜〜! しんどかったぁ」
錠前を施錠してから、ペコはその場に尻餅を突いた。
チャッキーは微笑ましさと感謝を込めて、ペコの背中を軽く叩いた
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