第六章
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花火はそれ一つじゃなくて次々にあがって。青い花もあれば黄色の花もあった。形も色々だった。
無数の花火が次から次にあがる。皆その花火達を笑顔で見ていた。
そうしてだった。皆で言った。
「やっぱり夏はな」
「お祭りの最後はな」
「花火だよな、打ち上げ花火」
「これがないとね」
「夏じゃないわ」
「お祭りじゃないわ」
笑顔でだ。それぞれ言っていた。
僕達もだった。その打ち上げ花火を見て。
小林さんが満面の笑顔で僕に言ってきた。
「奇麗よね」
「そうだね」
僕もその小林さんの笑顔を見ながら話す。
「とてもね」
「私線香花火も好きだけれど」
「打ち上げ花火も好きなんだ」
「そうなの、あの花火も
好きだと。こう僕に話してくれた。
「大好きなの」
「そうなんだ。僕は」
ここでふとだった。また言おうとした。
小林さんに。もう一度。
それで言おうとしたけれど今度は勇気が出なくて。それでだった。
言おうとした言葉を打ち消して。それからだった。
こう言いなおした。まずは。
「いや、僕もね」
「打ち上げ花火好きなのね」
「そうなんだ」
にこりと。笑顔を作って小林さんに答えた。
「夏になったら絶対に見ないとね」
「気が済まないのね」
「そうなんだ。じゃあね」
「今こうして見ましょう」
「そうしよう」
「皆でね」
花火を見て。その光に、線香花火とはまた違う光に照らされている小林さんの顔は打ち上げ花火にも負けない位に奇麗だった。中学生の時の思い出だ。
あれから僕も大人になって結婚して子供ができて。今に至る。けれど夏になるといつも思い出す。あのお祭りのことは。それで皆のことも、特に小林さんのことも思い出す。皆それぞれの道で幸せにやっている。小林さんも結婚して幸せらしい。その小林さんに言えなかったことは。今の妻に言ってしまって今こうしている。別の夏祭りの時に。
夏祭り 完
2011・8・4
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