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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十二話 呪縛からの解放
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れと移住にかかる費用の支弁、そんなところです。そうすれば年寄りはともかく若い人間の中には移住を望む者が出るかもしれません。先は長い、誰だとて未来に希望は持ちたいと思うものです」
リヒテンラーデ侯がジロリと俺を見た。
「なるほど、卿、怖い事を考えるの。一気に安楽死させるのではなく徐々に地球を老衰死させるか」
「……」
「数十年後には地球は年寄りだけの星になるやもしれぬ。まるで地球そのものじゃな」
老人が薄らと笑みを浮かべた。冷笑、蔑笑だろうか。
「死ぬとは限りますまい、生き延びる可能性も有ります。どちらを選ぶか、地球に住む人間に決めさせては如何かと提案しております」
詭弁だな、多分地球は衰弱死する事になる。何故ならリヒテンラーデ侯は地球を廃棄したいと考えているからだ。優遇策は思いきったものになるだろう。俺も地球の廃棄は正しいと思う。現状において地球という星は人類にとって御荷物でしかない。人類発祥の地、地球。それ自体が人類にとって負の遺産になっている。そして負の遺産がプラスに代わる可能性は無い。リヒテンラーデ侯も詭弁だと思ったのだろう、“ま、そういう事にしておくか”と言った。
話は終わった。移住する無人惑星はここで決める必要は無い。工部尚書シルヴァーベルヒに任せておけばいい事だ。彼が適当に選んでくれるだろう。俺はリヒテンラーデ侯とお茶を飲む。他愛ない話をしながら地球の事を考えた。何故地球は人類から見捨てられたのか……。
九百年前、地球は人類社会の盟主だった。だが良い盟主だったとは言えない。傲慢で他を搾取しそれを地球の当然の権利と主張するとんでもない盟主だった。権利の根拠は地球が人類発祥の星だったから、それだけだった。地球にはリーダーシップも崇高な理念も無かった。有ったのは意味の無い選民思想と傲慢と貪欲だけだ。
結局はそれが原因で没落した。それも完膚なきまでに叩き潰された。当時の人類、地球に住む人類を除いた大多数がそれを望んだのだ、それほどまでに嫌われた。リヒテンラーデ侯が自業自得と言った言葉がそれを表している。叩き潰した後も人類の地球への憎悪は消えなかった。地球没落後の人類が目指したものは脱地球的な宇宙秩序による銀河連邦の成立だ。徹底的な地球否定と言って良い。
そう考えれば銀河連邦が地球を無視したのも理解出来る。連邦にとって地球救済など最初から有り得ない選択肢だった。当然だが無視された地球は連邦を恨んだだろう、憎んだに違いない。何故そこまで地球を否定するのか、地球こそが人類発祥の地ではないかと。
無視される事ほど傷付く事は無い。自分の存在意義さえも見失いかねないのだ。地球以外の星ならそうなっていただろう。おそらくは無人惑星になっていたはずだ。だが地球には地球こそが人類発祥の地という精神的な支柱が有った。いや支柱
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