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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十二話 呪縛からの解放
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自業自得か、……確かにそうだ。地球はそう言われても仕方のない事をした。
「その一千万人だが皆地球教徒かな」
「多分そうでしょう、地球に住んでいたのですから。もっとも地球教団の支配者のように狂信者かと言われれば疑問が有ります。まあ選民思想は有るでしょう」
「なるほど」
紅茶を一口飲んだ。うん、悪くない。老人も紅茶を顎の下に持っていった。飲むのかと思ったら香りを楽しんでいる。意外に粋だな。
「地球から引き離すか。そして地球は無人惑星にする。資源も産業も無いのじゃ、そんな惑星に一千万も人が住んでいるのが異常よ。廃棄はおかしな考えでは有るまい」
「……」
「人が住まねば問題も生じぬ。住民にとっても他の星へ移住の方が将来性は明るい。どうじゃな?」
まあね、確かにそうなんだ、廃棄はおかしな考えじゃない。そして地球から人を居なくすれば良い。俺も同じ事を一度は考えた。
「無人惑星に移住なら宜しいですが有人惑星となると間違いなく先住民が嫌がりますね、反対が酷いでしょう。彼らからみれば地球教徒なんてサイオキシン麻薬を使う狂信者、犯罪者です。間違いなく排斥運動が起きます、一つ間違うと殺し合いに発展するでしょう」
リヒテンラーデ侯が顔を顰めた。つまりこの老人もその可能性を認めたというわけだ。もっとも致命的な欠点というわけでもない、開発を放棄した無人惑星などいくらでも有る。そこに移住させれば良いだけだ。ただ一から始めるから金はかかるだろう。問題は他に有る。
「それに地球に住んでいる人間は移住そのものを嫌がるかもしれません」
「何故かな」
「先程も言いましたが狂信者ではなくても選民意識は有ると思います。地球から離れればそれを失う事になるのです。素直に受け入れる事が出来るかどうか……。特に年寄りはそれが強いと思います、それを支えに生きてきたのでしょうからね。こちらも暴動が起きかねません」
「厄介じゃな」
リヒテンラーデ侯が溜息を吐いた。気持ちは分かる、俺も溜息を吐きたい気分だ。地球に住む人間は皆がその境遇に不満を持っている。一旦暴動が起きれば一気に爆発するだろう、一千万人が暴動を起こす事になりかねない。それを鎮圧するのにどれだけの犠牲が生じるか、……悪夢だな。
「卿、何ぞ考えは無いか。何の考えも無しにここに来るとも思えんが」
狡い爺さんだな、そんな期待に満ちた目をするなんて。でもなあ、俺にもあんまり良い手は無いんだ。
「強制ではなく移住を希望する者を募っては如何でしょう。もちろん前提として地球教の棄教が有りますが」
「ふむ、強制ではなく希望者か……」
リヒテンラーデ侯が考え込みながら紅茶を飲んだ。
「移住する者は何らかの形で優遇しましょう、移住し易くするのです。例えばですが移住後或る一定期間における直接税の免除、そ
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