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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百六十二話 呪縛からの解放
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い。
「それと女性だけの組を二つ用意する事。横の連絡を取らせない事に留意して貰いたい」
妙な事を言う。アンスバッハ准将を見たが准将も訝しげな表情をしている
「それは互いの存在を知らせるな、単独で行動していると思わせろという事でしょうか」
ルーゲ伯爵が微かに笑みを浮かべた。珍しい事だ。
「その通りだ、フェルナー課長補佐。フェザーンは敵地だからな、万一の場合の損害は出来るだけ小さくしたい」
アンスバッハ准将が“直ぐ用意します”と答えると伯爵は満足そうに頷いた。
帝国暦 489年 7月 5日 オーディン 新無憂宮 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
ルーゲ伯爵達と別れた後、国務尚書の執務室を訪ねた。幸いな事にリヒテンラーデ侯の他に人は居なかった。というより一息入れるために人払いをしていたらしい。悪い事をしたかと思ったが遠慮するなと言って歓迎してくれた。なんだか機嫌が良さそうだ。紅茶を用意してくれた。二人でソファーに座ってティータイムだ。
「何かあったかな」
「はい、お伺いしたい事が有りまして」
「ふむ、どうせまた厄介事じゃろう」
「まあ多少は」
口が悪いな、もっともリヒテンラーデ侯の表情は明るい。憎まれ口、そんなところかな。
「地球ですが如何なりましたか?」
「……如何とは?」
「あ、失礼しました。地球という惑星を如何するのかという意味です」
「なるほど、そちらか……」
リヒテンラーデ侯がウンウンというように頷いた。
「地球教団が壊滅した事で統治者が居なくなったわけですが」
「考えてなかったわ。そうじゃの……、放置は拙かろうな」
リヒテンラーデ侯が俺の顔を覗き込んだ。
「拙いでしょう、それをやって一度失敗しています。第二の地球教団が生まれかねませんし地球そのものを利用しようとする人間が出るかもしれません。何と言っても人類発祥の地です、毛並みは良い」
リヒテンラーデ侯が苦笑を浮かべている。
「となると帝国の直轄領というところか」
「そうなりますね」
リヒテンラーデ侯が顎に手を伸ばした。考えているポーズだな。
「どのくらい住んでいるのかの」
「一千万人程です」
「一千万! そんなにいるのか」
「はい」
老人が驚くのも無理は無い。ヴェスターラントだって二百万人だった。一千万は決して少ない数字じゃない。帝国の辺境惑星としては多い方だ。
「あそこはもう資源も枯渇して産業も存在しないと聞いているが……」
「九百年前の無差別攻撃で壊滅的打撃を被りました。それ以来大地が汚染されている状態が続いています。そのためだと思いますが住民達の平均寿命も短いようです」
「それでも一千万人が住んでいるか……、自業自得とはいえ酷いものじゃの」
リヒテンラーデ侯が溜息を吐いた。
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