第五章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
第五章
小林さんだった。小林さんをどうしても見てしまっていた。そうしてだった。
綿菓子とたこ焼きの後は合流してフランクフルトもお好み焼きも何でも買った。まずはとにかく食べた。
焼きそばもたい焼きもクレープもだった。とにかく皆で徹底的に食べた。育ち盛りだから皆食べることについては何の問題もなかった。
そして食べてからだった。僕達は遊んだ。
射的もして輪投げもした。けれど景品は全く当たらない。
「絶対に当たらないようにしてないか?」
「そうだよな」
この時はまだ景品は夜店の景品は頑張れば手に入るものだと思っていた。けれどそれが商売であり絶対に手に入らないとわかったのは大人になってからだ。
そのことに気付かないまま。この時の僕達は話していた。
「まあ頑張ったらな」
「ああ、手に入るよな」
「糞っ、プレステ欲しいのにな」
「俺はラジコンだよ」
「私はぬいぐるみ」
射的でも輪投げでもだった。そうしたのは全然当たらなかった。
そうして誰が幾らやってもいい景品は手に入らないままで。僕達は金魚すくいもした。
その中でだった。僕が金魚すくいの水槽の前に座ると。
まただった。小林さんが隣に来た。膝を折って座って僕の隣に来て。
静かに微笑んで。こう言ってきた。
「お隣いいかしら」
「あっ、うん」
戸惑いながら。僕は答えた。
「いいよ」
「それじゃあね。やろう」
「僕金魚すくいはね」
僕は首を捻って苦笑いになって話した。
「あまり得意じゃないんだ」
「そうなの?」
「殆んど捕まえたことないんだ」
「紙ってすぐに破れるからね」
「そうだよね。本当に簡単に破れるから」
「難しいわよね」
小林さんも笑って僕に言ってきた。
「私もあまり得意じゃないの」
「そうなんだ」
「金魚ってすぐに逃げるし」
その素早さもまた憎らしいまでだった。僕は今でも金魚すくいは苦手だ。
「紙突き破るし」
「少しでも大きい金魚はそうだよね」
水槽の中の金魚達は殆んどが小さい。けれど中には何か大きいのもいたり黒いデメキンもいる。ああいうのは捕まえようとしても無理なのはこの頃もわかってきていた。
「何ていうかさ」
「金魚すくいって難しいよね」
「そうそう」
「けれどそれでもね」
どうかと。僕に笑顔で話してくれた。
「金魚すくいって楽しいよね」
「そうそう、すぐに破れるけれど」
「破れまいって必死になってするから」
「面白いんだと思うわ」
こうした話をしながら僕達は金魚すくいをした。けれどだった。
僕も小林さんも一匹も捕まえられなかった。二人共紙をすぐに破られた。
僕は紙を見ずに入れて一匹捕まえようとしたらその端をやられた。小林さんは跳ねた大きい金魚に水に入れようとし
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ