#11『司祭達の日常』
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が…この建物の役割を、ただの大聖堂としか思わないだろう。
もっとも、この場所は単なる大聖堂ではない。その役割をもっていることは確かだが、そもそも《教会》と言う組織自体が、別に文字通りの意味での《教会》ではないのだ。
確かに、便宜的に《神》なる存在を信奉してはいる。だが、《教会》が崇拝することを求めるのは《教皇》であって、神ではない。そもそも《教会》という名前自体が、本来ならば《協会》という字を当てた方が正しいのだ。
ネオゴシック調の通路を歩いて、目的の場所を目指す。廊下ですれ違うのはそこそこ高貴な身なりをした司祭たちだ。《教会》支部の長の役割を任された高位士官たち。司祭のトップたる《十五使徒》の管轄内にある彼らだが、本当に善良な司祭の役割などこなせているのだろうか。
「(まぁ、私自身、エセ神父のようなものですがね)」
毒を愛し、毒を友とする。毒殺は己の生きる意味。そんな壊れた存在が、公正な神父で会っていいわけがないと思う。そんな存在を野放しにしているのだから、《教会》という組織がいかに穴だらけなのかわかるというモノだ。
なまじこの組織の実質的なトップが有能であることを知っているリビーラとしては、なぜこのようなことになっているのか、と思わなくもない。
恐らく、それらは《魔王》が《教会》を倒していけば明らかになっていくだろう。そう言う意味でも、ワクワクする先行きではある。
そう言えば司祭と言えば、《十五使徒》のうちの一人にたしかセルゲイの拾ってきた孤児がいたはずだ。何と言う名前だったか――――。
そんなことを想いながら歩いているうちに、目的の場所が見えてくる。ここばかりは最新技術を惜しげもなくさらしたカウンターは、《教会》の高官が出勤の証明をするために訪れるところだ。
「リビーラ・ロイ・セイ、出勤しました」
「はい、ありがとうございます」
カウンター席に座った若い女性司祭がぺこりと頭を下げる。この受付嬢のことはそこそこ知っている。こんなご時世で生真面目な人間だったはずだ。この人物なら、今日ここに来たもう一つの目的である人間がどこにいるのかも知っているかもしれない。
「すみません、《七星司祭》のミラフィ・ルースラビット様はどちらにいらっしゃいますでしょうか?」
「……申し訳ございません。本日ミラフィ様は、反乱軍鎮圧のために出かけておられます。《王都》にはいらっしゃいません」
「ふむ……そうですか」
それは残念。リビーラは心の中で呟いた。
ミラフィ・ルースラビットは、様々な意味で今後役に立つ可能性のある人物だった。リビーラは彼が来る前に《王都》を去ったので、彼との面識はほとんどない。そのため、今のうちに接触を図っておきたかった
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