#11『司祭達の日常』
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この時代のリビーラの起源。最初にリビーラの毒刃に斃れたのは、あの二人だった。
十二年前。リビーラは二人を毒殺した。善良な息子を
装って、その懐に、長い間熟成させた、即死の毒を仕込んで。
何が起こったのか理解できない、といった表情で、あっさりと、あっけなく死んでいった父達の姿。魂が消え行く気配。それを自分が引き起こしたのだという感慨。
その時に得た快楽が、渇望に、愉悦に飢えていたリビーラに、新たな希望をもたらした。
――――《七星司祭》全員を毒殺したなら、きっと楽しいに違いない。
その時以来、リビーラは当時の地位を捨て、辺境に籠った。《七星司祭》の個々の能力は強大だ。ヴィヴァルディとセルゲイが死んだことで、彼らの緊張感はさらに高まった。正面からでは殺せない。それにずっと《王都》に留まっていたら、いつか行いがばれて処刑されてしまうかもしれない。それだけは避ける必要があった。
そうしてたどり着いた辺境の地で、リビーラは過去の自分の記憶と、赤髪の少年王と出会った。当時今だ幼いままであった彼は、しかし高い理想を抱いていた。
あれから十二年。少年王は立派に成長した。多少達観し過ぎている嫌いもあるが、あの金髪の王妃が良い方向へ持っていってくれるはずだ。
もうすぐ、リビーラの夢も手が届く距離に近づいて来るだろう。そのとき、最高の気分で、消え行く命を感じるために――――
今、リビーラは最悪の気分で故郷の地を踏んでいる。
目の前には人工の空を貫かんとそびえる白亜の尖塔。所々に青や金の装飾が施された外観は、壮麗ながら神聖を感じさせる。
《教会》の全支部を束ねる総本山にして、諸悪の根源。世界の中心たる此所こそが、《教会》本部である。
かつてのリビーラはここで働いていた。辺境に行き、『《魔王》のレギオン』に参加するようになってからは、こうして《教会》高官の義務である定期出勤以外には来ていない。
「どうも、お疲れ様です」
「リビーラ様!お疲れ様です!」
まだ若い門兵が、ガシャリと騎士装を鳴らして敬礼する。人当たりの良い笑顔を作ってそれに答えると、リビーラは何の問題もなく《教会》本部の門を潜った。
全く、一切のボディチェックも無いのだからざるなものである。もっとも、簡単に暗殺されるような人間はこの場にはいないのだろうが。それを考えると、あの時ヴィヴァルディとセルゲイを殺せたのが本当に奇跡だったかのように思えてくる。当時、散々騒ぎになったのもうなずける話だ。
本部の中は、基本はネオ・ゴシックの佇まいをしている。所々に機械文明の一部が見え隠れしていることを除けば、知識のない者見れば…もっとも、今の時代にそんな者は一人たりとして存在していない
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